時事通信が選ぶ国内10大ニュース
インフォシーク / 2015年12月28日 14時0分
第1位 安全保障関連法が成立
集団的自衛権の行使を可能にすることや、米軍への後方支援を大幅に拡大することなどを柱とする安全保障関連法が9月19日、成立した。「国の存立が脅かされる明白な危険」などの要件を満たす場合、自衛隊が海外で武力を行使できることになり、日本の安全保障政策は大きく転換された。安倍政権は「抑止力の強化につながる」と強調しているが、野党や憲法学者らからは「憲法違反」との指摘も出ている。
安保関連法は、自衛隊法など計10本の改正法と、自衛隊の海外派遣を地理的制約なく随時可能にする新法で構成。日米両政府が4月に再改定した防衛協力指針(ガイドライン)と表裏一体の関係を成す。安倍内閣は、集団的自衛権行使を容認した昨年7月の閣議決定を踏まえ、今年5月に国会に関連法案を提出。衆参両院通算で約216時間にわたり審議が行われた。
第2位 ISが邦人人質殺害
首相官邸前で後藤健二さんの解放を訴える人たち=1月28日、東京都千代田区【時事通信社】
過激派組織「イスラム国」(IS)は1月、シリアで行方不明になった湯川遥菜さん=当時(42)=とフリージャーナリストの後藤健二さん=当時(47)=を人質に取り、殺害した。ISはそれまで欧米人を殺害したとする動画を公開してきたが、邦人が犠牲になった事件は初めてだった。
ISは、安倍晋三首相がIS対策として2億ドルの人道支援を表明した後、2人の殺害を警告するビデオ映像を公開。72時間以内に同額の身代金を支払うよう要求した。期限切れ後、ISは湯川さんを殺害したとする画像をネットに投稿し、要求を身代金からヨルダンで収監中のイラク人女死刑囚の釈放に切り替えた。日本政府はヨルダンなどに協力を求め、人質解放に努めたが、その後後藤さんを殺害したとする動画が公開された。
第3位 TPP交渉が大筋合意
環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合の共同記者会見に臨むフロマン米通商代表部(USTR)代表(中央)と甘利明TPP担当相(左)ら=10月5日、アメリカ・アトランタ【EPA=時事】
日本や米国、オーストラリアなど12カ国による環太平洋連携協定(TPP)交渉が10月5日、5年半に及ぶ協議の末、大筋合意した。各国の議会承認を経てTPP協定が発効すれば、共通の貿易・投資ルールを持つ人口8億人、国内総生産(GDP)3100兆円の巨大市場が誕生。アジア・太平洋地域の成長を取り込み、日本経済の活性化につながるかどうかが注目される。
日本は工業製品や農林水産物など全貿易品目(9018品目)のうち約95%で輸入関税を撤廃し、貿易の自由化を促進する。国会決議で関税維持を求められたコメなど農産物重要5項目は完全自由化の対象から除外された。コメについては計7万8400トンを上限に無税輸入枠を創設、牛肉は38.5%の関税を協定発効から16年目に9%まで削減するなど部分的な譲歩で決着した。
第4位 川内原発が再稼働
九州電力川内原発1号機の原子炉建屋(奥)と、再稼働に抗議する人たち=8月11日、鹿児島県薩摩川内市【時事通信社】
九州電力は8月11日、川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動し、再稼働させた。9月10日には営業運転に移行した。2011年3月の東京電力福島第1原発事故を受け、原子力規制委員会が策定した新規制基準に基づく原発の稼働は初めてで、国内で原発が運転されるのは13年9月に関西電力大飯原発(福井県おおい町)が停止して以来。「原発ゼロ」は1年11カ月で終わった。10月15日には川内2号機が再稼働した。
九電は13年7月、川内1、2号機の審査を申請。規制委は昨年9月、新基準を満たすと判断した。事故に備えて住民の避難を準備する半径30キロ圏には9市町の約21万人が住み、各自治体は避難計画を策定したが、住民の間には実効性を疑問視する意見も残る。
第5位 戦後70年で安倍首相談話
戦後70年談話について記者の質問に答える安倍晋三首相=8月14日、首相官邸【時事通信社】
政府は8月14日、戦後70年の安倍晋三首相談話を閣議決定した。談話は先の大戦について「わが国は繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきた」と指摘した上で「こうした歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」と表明。1995年の村山富市首相談話や2005年の小泉純一郎首相談話に明記された(1)植民地支配(2)侵略(3)痛切な反省(4)おわび―のキーワードについても、引用など間接的表現ながら、談話に盛り込んだ。
安倍首相は当初、国会で村山談話について「安倍内閣としてそのまま継承しているわけではない」と答弁するなど、独自色を反映させることにこだわりをみせていた。しかし、中韓両国の反発や連立を組む公明党の要請も踏まえ、歴代内閣の姿勢を引き継ぐ考えを明確にした。政府は談話の真意が伝わるよう中国語と韓国語の翻訳も作成した。
第6位 東芝不正会計で歴代社長辞任
不正会計問題で記者会見し、謝罪する東芝の田中久雄社長(中央、当時)ら=7月21日、東京都港区の同社本社【時事通信社】
日本を代表する電機メーカー、東芝で利益を意図的にかさ上げする不正会計が発覚した。社外の弁護士らで構成する第三者委員会は7月、経営陣が関与し、パソコンやテレビなど幅広い事業で不正な会計処理が組織的に行われたと認定。田中久雄氏ら歴代社長3人が引責辞任する事態に発展した。利益かさ上げ額は過去約7年間で累計2248億円に上った。
証券取引等監視委員会は12月、有価証券報告書に虚偽記載があったとして、過去最高額となる約73億円の課徴金を科すよう金融庁に勧告。個人株主は、株価下落で損害を受けたとして同社や旧経営陣に賠償を求める訴訟を相次ぎ起こしているほか、同社自身も旧経営陣を提訴。東芝は不正会計の一因となったパソコンなど不採算事業の見直しや人員削減に迫られている。
第7位 新国立競技場建設、エンブレム白紙に
エンブレム使用中止を受け、東京都庁内で2020年東京五輪・パラリンピックのポスターをはがす職員=9月1日、東京都新宿区【時事通信社】
2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の建設計画や大会エンブレムが相次いで見直しを迫られた。新競技場は整備費が当初の予定を大幅に上回ったことに批判が集中。7月に安倍晋三首相の指示で旧計画は白紙撤回された。エンブレムは、佐野研二郎氏の作品に対し他のロゴとの酷似を指摘され、選考し直す事態に発展。五輪ムードに水を差す結果となり、国際的な信用も損なった。
新競技場をめぐっては、8月に総工費の上限を1550億円に設定した新計画がまとまった。事業者2グループから提出された技術提案書が公開され、22日に新デザインと業者が決定した。一方、エンブレムは五輪組織委員会が応募資格を大幅に緩和して再募集、今月上旬までに1万4599件の応募があった。来春に新デザインが決まる予定だ。
第8位 辺野古移設、国が着工
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設先の名護市辺野古沖合で政府が進める海底ボーリング調査=11月12日【時事通信社】
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設計画で、政府は10月29日、本体工事に着手した。移設反対を掲げる同県の翁長雄志知事が辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消すなどして対抗措置を講じる中、政府側が押し切った。政府は11月、県を相手取り、埋め立て承認取り消しの撤回を求める代執行訴訟を福岡高裁那覇支部に提起。国と県の対立は法廷闘争に発展した。
昨年11月の知事選で初当選した翁長氏は、移設反対は「民意」と訴え、仲井真弘多前知事による埋め立て承認には「法的瑕疵(かし)」があるとして今年10月に取り消しを決定した。これに対し、政府側は前知事の承認を「有効」と主張し、取り消し決定の効力を一時停止。海底ボーリング調査や護岸工事に向けた資材置き場建設を進めている。県も25日、国側を提訴した。
第9位 日本人科学者2人がノーベル賞
授賞式を終え、ノーベル賞のメダルを見せる梶田隆章さん(左)と大村智さん=12月10日、スウェーデン・ストックホルム【時事通信社】
アフリカや中南米の寄生虫病特効薬の開発に貢献した大村智・北里大特別栄誉教授がノーベル医学生理学賞を、素粒子「ニュートリノ」に質量があることを初めて確認した梶田隆章・東京大宇宙線研究所長がノーベル物理学賞をそれぞれ受賞。日本人のノーベル賞受賞者は計24人になった。
大村さんは抗生物質「エバーメクチン」を発見。この物質に基づく抗寄生虫薬「イベルメクチン」は寄生虫病への効果が確認され、幅広く使われている。物質を構成する素粒子の一つニュートリノは質量ゼロと考えられてきたが、梶田さんは素粒子観測装置「スーパーカミオカンデ」を使い、ニュートリノがごくわずかな質量を持つ証拠となる「ニュートリノ振動」という現象を初めて確認した。
第10位 ラグビーW杯で歴史的勝利
南アフリカに勝ち、喜ぶ日本代表の選手たち=9月19日、英国・ブライトン【時事通信社】
9月から10月にかけて開催されたラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会で、日本代表が大躍進して世界を驚かせた。過去7大会で白星は1991年のジンバブエ戦だけだった日本が、1次リーグ初戦で南アフリカを34―32で破る歴史的な勝利を挙げた。W杯で2度の優勝を誇るラグビー強国の南アを、試合終了直前の逆転トライで倒す大金星だった。
続くスコットランド戦は完敗したが、サモア、米国に快勝。五郎丸歩(ヤマハ発動機)は正確なゴールキックを武器に計58得点をマークした。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチの指導の下、積み重ねてきた猛練習が実を結んだ。3勝1敗で並んだ南ア、スコットランドに勝ち点で及ばず3位にとどまり、準々決勝進出はならなかった。それでも、19年W杯日本大会につながる活躍だった。
第10位 外国人観光客激増、爆買いも
家電などを販売する免税店「ラオックス」で日本製の炊飯器を大量に購入(爆買い)した外国人観光客=6月14日、東京・銀座【時事通信社】
2015年1~11月の訪日外国人数は、日本政府観光局の推計で前年同期比47.5%増の1796万4400人に達した。円安に加え、日本発着の国際航空路線の拡充、査証(ビザ)発給要件緩和などを背景に、過去最高だった14年の年間実績(1341万人)を既に上回った。15年年間では1900万人台に達する見込みだ。
訪日観光客が日本を訪れ、炊飯器やカメラ、薬、化粧品といった家電やブランド品などを大量に購入する「爆買い」も注目を集め、今年の流行語大賞にも選ばれた。日本百貨店協会によると、外国人観光客向けの免税売上高(1~10月)は前年同期と比べ、約3.1倍の1609億9600万円。ただ、中国を含む新興国経済の減速に伴い、爆買いの勢いが鈍る可能性も指摘されている。
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