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コロナ後さらに格差拡大した「K字経済」をどう乗り越えるか/INSIGHT NOW! 編集部

INSIGHT NOW! / 2023年1月10日 8時30分

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INSIGHT NOW! 編集部 / インサイトナウ株式会社

コロナ禍で人の流れが止まり、経済が急激に落ち込み、その後回復するかと思われたものの、事態はそう簡単には治まらなかった。急激に業績を上昇させた企業と、変わらず低下・縮小を続ける企業に完全に分かれてしまい、業績が良い企業はより良く、悪い企業はより悪くなった。

この上昇と下降が両方ある状態を「K字経済」と呼び、ますます企業間の格差が拡大しているようだ。

業績が下降した企業は、コロナ禍での需要の落ち込みをまともにくらい、おまけに原材料価格の上昇、円安によって利益幅が減り、ますますの苦境に陥っている。逆に急回復した企業はコロナによる人流の減少も落ち着きからコロナ前の業績に戻し、円安も海外への販売がプラスに影響し、収益を伸ばしている。

実際に、2023年度の税収は、69兆4400億円と2022年度の当初予算よりも4兆2050億円上回ると見込まれており、その最大の理由としては、新型コロナで落ち込んだ企業の業績が回復し、法人税の税収の増加が見込まれているという。

独立行政法人労働政策研究・研修機構によれば、業種別に見ると、2019年第四四半期あたりから前年マイナス幅が大きくなったものの、輸送機械製造業を中心に2021年第二四半期あたりから回復しているが、卸・小売や金属製品はマイナス幅をまったく取り返せてはいない状況が見て取れる。

K字型回復が意味すること

このK字型経済(復活)は何を意味するのだろう。

経済が多様化し、複雑化するにつれ、かつてのようなすべてにプラス、すべてにマイナスという社会は、現実にならなくなっているのか。しかも、「業種による」という区分けさえ、もはや最大の要素ではなくなってしまっているのだろうか。

実際に、同じ業界のなかでも、絶好調の企業もあれば、倒産寸前のところもある。当然、構造的な問題で縮小傾向にある業種もあるのは間違いないが、それよりも、状況、環境の変化に対して、対応する力、レジリエンス力、機敏に変化する能力を持つことのほうがより重要なのかもしれないとも思える。

つまり、コロナのせいで「巣ごもり需要が増えた」「リモートワークが増えた」「外食しなくなった」からだと片付けるのは簡単だが、不況業種といわれる業界でも業態チェンジやさまざまな変革で乗り切っている企業もあるということだ。

たとえば紳士服のAOKIは、コロナ禍でもリモートワーク客を取り込む「快活CLUB」は順当に店舗数を伸ばしている。アパレル不況の余波は少なくはないが、少なくとも事業戦略の選択の幅は大きいし、的確な判断も可能だ。

また、どれだけ時流に乗って好調な業績を上げている業種であったとしても、数年先がどうなっているのかはまったく分からない。この「快活CLUB」でさえ、今後のこまかなニーズ変化に対応していかない限り未来が安泰とは言えない。

福岡伸一氏は、「動きを止めず、小さな新陳代謝を重ねながらバランスを保つ」ことが生命の維持には欠かせないと語り、それを「動的平衡」と呼んだ。生命維持の原則としての意味は少し異なるだろうが、これは企業(=組織)においても同様のことが言える。常に変化する環境やニーズに合わせ、少しずつでも変革を遂げている組織だけしか生き残ることはできない。しかもそのサイクルは短くなる一方で、しかも変化の度合いも激しい。

厳しい言い方かもしれないが、K字回復の状況で、下降曲線を描かざるをえない組織は、環境に応じた変化ができない組織であるとも言えるだろう。

人もK字の格差が生まれている

この「K字」の状態は、企業間だけではなく、人の間でも起こっている。低所得者は、雇用環境が悪化したままであり、富裕層は金融や不動産の価格上昇の恩恵にあずかり、ますます差は開いている。

資産・資金に余裕のある大企業のホワイトカラーはリモートワークなどという絶好の働き方を与えられ、さらに恵まれた。労働はこれまでにも増して楽になり(そのなかでもITリテラシーやコミュニケーション力による新たな差は生まれたが)、若い世代を中心に、通勤の負荷や飲み会もなくなり、ES面でも高評価を得たようだ。

一方、現場で働き、しかも時間給で働くような人たちは働くことすらままならず、さらに生活は苦しくなった。世界的に見ても、このコロナ禍においては、大きなダメージを受けたのは、間違いなく貧困層、若年層、有色人種、雇用調整の犠牲者となってしまった人たちだ。

現在、大企業を中心に正社員の給与アップの流れとなっているが、大企業であっても、パートの職員や現場で働く労働者を抱えており、こうした人たちの待遇アップこそが、まずやるべき施策なのではないかと思えてくる。

これからもさまざまな大きな環境変化が起きるのは間違いなく、そしてまたK字の状態となるのも間違いないだろう。私たちにできることはどのようなビジネスパーソンであれ、常に変化を繰り返しながら、会社に頼るだけではなく、どんな環境変化が起きようとも、対応できるスキル、レジリエンス力を個人として身に付け、変化に対応できる準備をしておくことしかないのだろうか。

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