教育のポルポト派/純丘曜彰 教授博士
INSIGHT NOW! / 2014年12月26日 3時40分
純丘曜彰教授博士 / 大阪芸術大学
/教育改革論者の多くが、教育界から卒業できなかった社会の「負け組」。彼らはルサンチマンで丸暗記を否定するが、丸暗記のオウム返しの詰め込みのなかでこそ、ダイナミックな連想が織り上げられ、創造力が養われてくる。/
詰め込み型の知識ではなく、生きる力を、なんて言ってる連中の経歴を見ると、ほとんどまず東大出、京大出ではない。いわゆる教育学部、旧師範学校系。それどころか、もっと正体不明の経歴の世襲私立学園長たち。その傘下に、各県の教育委員会、小中高の教員がいて、教育界では、一般企業では中核の、いわゆる一流大学出の教員は、むしろ少数劣勢。一ことで言えば、いまの日本の教育は、従来の日本の教育の「負け組」が支配し、その怨恨が子供たちを人質に取ってしまっている。
彼らは、そもそも知識がどんなものか、わかっていない。記憶より応用を、なんて言うが、応用すべきモノがなければ、なにも始まるまい。九九でも、年号でも、まず覚えないことには、どうにもなるまい。そして、さらに言えば、記憶こそが、ダイナミックな連想力であり、創造力そのものだ。サザンが、で、キュー、を連想するのと、金閣寺、で、義満、を思い浮かべるのと、仕組みは同じ。どのみち無契的(図象的な類似性が無い)な関係なのだから、記号論的には、理解もなにも、丸暗記する以外に方法などありえない。だが、こういう無契的なつながりがネットワークをなしているほど、数や時代のイメージが深まる。
本当の意味での「勉強」をやってみたことのない連中には、丸暗記のオウム返しと、記憶や知識、発想力の重要な繋がりがわからないのかもしれない。オウム返しは、短期記憶で、言ってみればデスクトップ。これに対して、知識は、複雑にハイパーリンクしており、何かをデスクトップの俎上に上げると、そこから、とめどなくずるずるとさまざまな連想が引き出されてくる。そうやって引き出されたものは、短期記憶上でさらに新たに相互に結びついて、また仕舞い込まれる。この、記憶を織って知識を編む作業が「勉強」。
だから、むしろ丸暗記のオウム返しのような短期記憶の反復の中でこそ、我々は、勉強として、知識を編む。書取だの、暗記だの、ろくに集中もせず、上の空でやっていてもムダ、と、学校の先生は叱るが、まさにろくに集中もせずに上の空でやっているからこそ、いろいろなくだらない語呂合わせだの、イメージの妄想だの、いたずら書きだのが湧いてくる。こんなつまんない授業、早く終わんないかなぁ、なんていうぼやきの中で、科目さえも飛び越えて、大きな教養、将来の自分の夢が作られてくる。このぼんやりした世界の教養の中で、自分を含めて、日常や人生を考えるとき、それが生きる哲学になる。
勉強に集中しただけの秀才は、絶対に天才にはなれない。それどころか、ろくに連想力、構想力が養われていないから、社会でも使えない。社会における自分の夢さえ描けない。それで、連中は、学校というものから永遠に卒業できず、大人になっても子供相手の居丈高な「教育」にしか携われない。本当の意味での勉強では「負け組」。そのうえ面倒なのは、連中の、学校というものに対する強烈なルサンチマン(怨恨)。あんなに集中して努力したのに、教育界以外では自分たちが評価されていない、という世間に対する憎しみ。
学校と勉強を破壊しようとする連中の妄言に振り回されても、ろくなことにならない。だが、公的な学校教育がどう変ろうと、結局、子供に力を与えるのは、親の責任、家庭の義務。連中は、いずれかならず駆逐される。自分の子供をあえて堕落させ、学校の先生にでもしようと思うのでなければ、知識の詰め込みは、むしろ、どんどんやった方がいい。どうせ子供は、そんなもの、大量に詰め込まれたって、上の空で、ムダな妄想や連想、さらには内職に明け暮れる。だが、それこそが、本当の勉強だ。その中で、研究でも、芸術でも、一般企業でも、その他の仕事でも、自分で考え、自分で生きられる子が育つ。by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士
(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)
この記事に関連するニュース
-
小学3年生までに算数が得意になれば、その後の人生は無敵!?最強の「算数力」を鍛える秘密のメソッドを初公開!
PR TIMES / 2024年5月15日 11時45分
-
「ちゃんと座って‼」勉強中の息子に平手打ちを繰り返す…中国SNSで大炎上した"教育ママ"の言い訳
プレジデントオンライン / 2024年5月5日 10時15分
-
東大合格導く駿台講師語る"頭よくなる思考法" 地理の学習を通して日常の思考力を鍛える
東洋経済オンライン / 2024年5月4日 13時10分
-
【単語丸暗記だけではダメ?】英会話経験者598人に聞いた「英会話力が伸びた or 失敗した方法」(NOVA篇)
PR TIMES / 2024年4月24日 15時45分
-
「東大生・京大生は頭がいい」は錯覚…学校教育を真面目にコツコツ積み上げてきている人たちに足りない視点
プレジデントオンライン / 2024年4月22日 15時15分
ランキング
-
1だからトヨタは「全方位戦略」を貫いた…「富裕層のシンボル」テスラがここにきて大失速しているワケ
プレジデントオンライン / 2024年5月20日 9時15分
-
2やがて太陽光パネル"大量廃棄の波"が押し寄せる…地銀の「電力子会社設立ブーム」に潜むリスク
プレジデントオンライン / 2024年5月20日 10時15分
-
3再送-米アップル、薄型iPhoneを開発 25年に発売か=報道
ロイター / 2024年5月20日 8時30分
-
4ドライブスルー中古車査定が登場…強みは「スピードと会話の短縮」
レスポンス / 2024年5月20日 19時30分
-
5医師が推薦!「おやつ」はむしろ食べたほうがいい… 大谷翔平も実践していた理想のおやつとは?
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月20日 8時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください