ポイントサービスからの退会手続きに難儀するとは/日沖 博道
INSIGHT NOW! / 2015年1月19日 17時43分
日沖博道 / パスファインダーズ株式会社
登録は簡単。しかし退会しようとすると、これが困難極まりない。体験で知る有名サービスの知られざる実態と、そこから推察される背景。
誰もが知っている有名な共通ポイントサービスでの体験談です。小生はある事情から、以前から会員となっていたこのポイントサービス(仮に「○ポイント」と呼びましょう)には何となく親近感を持っていました。しかしながら多忙で主たるサービス(一種のレンタル)を利用する時間がずっとないこと、登録してあった近所の2店からの販促メールと本部からの販促メールでほぼ毎週3通のメールが来ることにいい加減嫌気がさしてきたこと、貯まったポイントを使う当て(知識)がないことなどを考慮して、カードの更新時期が来たのをきっかけに会員を止めることにしました。カードに記載されていた窓口に電話して、退会を申し込み、こちら側でさらに何か手続きが必要かと問うと、オペレータのお姉さんは「お手続きはこれで完了です」と答えてくれました。当然、これで退会手続きは完了したものだと小生は考えました。しかしその後も相変わらず販促メールは毎週3通届きます。もちろん会員カードがないのでレンタルサービスは利用できません。約2ケ月そういう状態が続いた後、当該サービスのウェブサイトを舐めるように読んでみても、自分がどういうステータスにあるのか、一体どうしたら退会できるかは記載されていません。しかしもしかすると、クレジット機能付きの会員カードの退会はクレジットカード会員からの退会に過ぎず、まだサービス会員としてのステータスは維持されているのかもしれないと思いつきました。電話問い合わせ先も見つかりません。そこでウェブサイト上の問い合わせフォーマットに記入して、どういうステータスにあるのか、退会したいがどうしたらいいのか、顧客データベースから完全に抹消して欲しいといった旨を伝えました。2~3日してメール回答がきましたが、どうもこちらの意図を汲んでもらえずに、ピントのずれた回答と「あとはFAQをご覧ください」という内容でした。結論から言うと、こんなやり取りを数回繰り返しました。その度に回答担当者の名前は違っていました。2ケ月ほどやり取りが続いて、ようやくサービス会社側から「本当に退会したいのですね。なぜ最初からそう言っていただけなかったのでしょうか(何度も書きましたけど…)」「貯まっているポイントは無効になりますよ、本当にいいんですね」という趣旨の、少々つっけんどんなメール回答が来ました。ポイントは無効になって構わないから早急に退会したいなどという要請をする人間はよほど例外的なのでしょうか。当時はベネッセの顧客リスト流出事件がニュースになっており、小生としては当方にメリットがないのに大手の顧客データベースに載っている状態はリスクでしかないわけです。ですから「構いません。確実に顧客データベースから削除されることをお願いします」と念押しして、退会の意思を明確に表明したメールを返しました。その後数日して先方からは「了解しました。退会の手続きを致します。退会手続き完了後も、数週間は店や○ポイントの本部から案内メール(販促メールのこと)が届くかも知れませんが、ご了承下さい」という最終確認的なメールが来たので、ようやくこれで決着したと小生も安心しました。電話でのカード退会の申し込みから既に4ケ月ほど経っていました。しかしこの最終確認メールから約1ケ月経った昨日、店からの販促メールが相変わらず届きました。小生の「STOP!○ポイント」作戦は5ケ月過ぎても「任務完了」していません。ではなぜ単なる退会にこんなに手間が掛るのでしょうか。想像するしかないのですが、幾つかの要素が絡んでいそうです。第一には、そもそも仕組みとして、そして組織思想として退会を想定していないのでしょう。「基本的に無料でこんなに役立つ共通ポイントサービスなんだから、退会したいなどという馬鹿な奴はいないはず」という思い込みと驕りがあるのかも知れません。そのため案内メールにもウェブサイトにも退会方法が明記されておらず、会員自身がワンクリックで退会するなどというイマドキ常識の仕組みではなく、しつこい要請があった場合のみマニュアル作業で退会処理をするのでしょう。第二に、問い合わせ処理を行う部門に緊張感や真剣さがなく、キーワードに基づいて機械的に処理する惰性が感じられました。こうした業務は通常、外注されていますので、相当厳しいコストを押し付けられているのかも知れません。今回の数回のやり取りにおいては、最初の問い合わせで発行された「問い合わせ番号」というのを常に小生のほうから提示していました。それで過去の問い合わせ内容と併せて読んだらすぐに分かることなのに、読まずに処理しようとしていたのは明らかです。最後に、顧客データベースからの削除が簡単ではない技術的構造があるのかも知れません。つまりデータベースが一元化されておらず、本部と店舗それぞれが独立した顧客データベースを持っており、一部からデータを削除しても他の顧客データベースには残ってしまい、ずるずると販促メールが送られるという構造です。○ポイント運営会社の場合、フランチャイズ制を採用しているのと、共通ポイントサービスのために他社に顧客データベースを使わせている可能性が高いため、こうした推論が現実性を持ってきます。いずれの理由も内部的な事情であって、会員には関係ありません。退会したいと要請した会員の登録データを速やかに削除して退会させる。こんな基本的なことができないようでは、同社の顧客データベース管理能力にも大きな疑問を持たざるを得ません。顧客データ流出に関する小生の不安と、退会のための不毛のやり取りはまだまだ続くのかも知れません。
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