営業改革を考える (13) KPIツリーは本質から考えよ/日沖 博道
INSIGHT NOW! / 2017年10月31日 12時30分
日沖 博道 / パスファインダーズ株式会社
以下は最近の営業プロセス改革プロジェクト(以下、PJTと称する)での出来事だ。
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改革後にモニタリングすべきKPIを考えようとなった際に、PJTメンバーの一人が「たたき台」と称して、あるKPIツリー図を作ってきた。それがいわゆる典型的BSCの構造になっており(下から「学習と成長視点」「プロセス視点」「顧客視点」「財務視点」に区分)、いかにもすっきりとしており、しかも営業プロセス改革向けに尤もらしく見えた。
しかし所々今回のPJTでは使っていない用語や概念が入っていたので幾つか突っ込むと、「これはツールベンダーの事例集から戴いてきました」という。
その時にはそれはそれで参考として見る分には構わないと思ったのだが、そうでもなかった。その後、実際にKPIの素案を考える担当に指名されたメンバーは何度か具体案を出してくれるのだが(この会社はレベルが高いので、幾つかのパートでは各メンバーに素案を考えてもらっている)、えらく小手先の手直ししか出ず、皆がピンと来ない。よほど最初に目にしたKPIツリー図のインパクトが強かったのだろう。
そこで一旦、頭の中をリセットしてもらうため、そもそも何のためにKPIを設定するのかから説く資料を作って議論をやり直した。そうした多少の回り道はあれど、最終的には改革ビジョンを整理し、それに基づき議論し、モニタリングすべきKPIのツリー構造も出来上がった。ツールベンダーの挙げた例とは似ても似つかないが、このクライアント独自のKPIツリーが出来上がったのだ。
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大きな改革プロジェクトになればなるほど、少なくない数のKPIを構造的に設定することは必然となると小生は考えているので、ツリー構造を採ること自体に問題がある訳ではない。また、各KPIがいろいろな側面をカバーし全体としてバランスを執るというBSCの基本的考え方も正しいと考えている。
しかしKPIツリーに関連し、多くの営業改革/業務改革プロジェクトで問題だと思えることを三つほど挙げたい。
第一に、上述のプロジェクトのように関連の薄い他社プロジェクトのKPI例を鵜呑みにして似せてしまうのは馬鹿げている。他社は他社、自社は自社だ。
第二に、典型的BSC構造を盲信するのも危険だ。「学習と成長視点」「プロセス視点」「顧客視点」「財務視点」の4区分はかなり汎用的なことは認めるが、必ずしも大半のプロジェクトで通用する訳ではない。
特に営業プロセス改革分野だと、財務視点では「受注/売上拡大」などを謳いたいところだが、それは製品・サービス面での強化充実が同時にないと難しい。つまりプロジェクトのコントロール範囲外なのでKGI/KPIには相応しくないケースが多い。また「学習と成長」の視点というより「学習と定着」の視点といったほうがピンとくることが普通だ。
最後に、他社のプロジェクト事例アウトプットを拝見したとき、KPIツリーの構造とその策定過程に疑問を抱かざるを得ないケースが少なくない。KPIツリーが綺麗過ぎるのだ。
そもそもKGI(最終的なゴール達成の指標)をブレイクダウンすると綺麗に主要KPIになる、などということが実際の業務改革/営業プロセス改革で当てはまることは滅多にない。最終的なゴール達成を示すKGIと、それを達成するためのレバレッジポイントに関するKPIの一部が直接的につながらないことがむしろ普通なのだ。
むしろ最終的なゴールを達成するための改革レバレッジポイントは何で、そのための施策は何で、それがうまくいった状態を表す指標は何、という順でKPIが決まるのが真っ当な考え方だと小生は考えている。それより下のレベルも同様だ。
つまり改革のロジックが先にあり、それぞれの出来不出来を表す指標が後でついていく、ということだ。KGI/KPIのブレイクダウンが先にあるという話ではない。この記事に関連するニュース
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