個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第二十三回
ITライフハック / 2014年4月3日 9時0分
![個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第二十三回](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/itlifehack/itlifehack_1701_0-small.jpg)
■はじめに
前回まで数回使って「でんでんエディター」&「でんでんコンバーター」といったEPUB作成Webサービスの使い方をご紹介してきました。
今回は直接的な制作技術ではなく、「情報の更新」ということをテーマに少しお話をしようと思います。
■Kindleパブリッシング・ガイドライン更新
まずAmazon Kindleについて。本ブログの読者の方ならAmazonのKindleストアに個人で制作した電子書籍をリリースできることをご存じかもしれません。
個人出版ではKindleダイレクト・パブリッシングというサービスを利用します。Kindleダイレクト・パブリッシングでは、入稿形式としてHTML形式、Word形式、リッチテキスト形式、EPUB形式などいくつかの形式をサポートしています。
オススメはKindleの電子書籍フォーマット(mobi形式、azw形式)と内部的に共通点の多く、他の電子書店での入稿にも利用できるEPUB形式です。
Kindle向けの電子書籍を作成する場合、Amazonが配布しているガイドラインに沿って制作します。以下ガイドラインへのリンクを掲載しておきます。PDFへの直接リンクなのでその点ご了承ください。
・「Kindleパブリッシング・ガイドライン」
このガイドラインでは基本的に入稿データにEPUB形式を想定して書かれているので、この点もEPUBをオススメする理由の1つです。
このガイドラインは時折更新されます。最近ではUSで1月に更新されました。最近になって日本語版がリリースされたので、目を通しておくのがよいでしょう。
以前の内容を大まかにでも把握されている方は、「どこが変わったのか」が気になるかもしれません。電子書籍に関して様々な試みを実践し、その情報を発信されている境祐司氏のWebサイト(Webマガジン)でその辺りの紹介が掲載されているので、リンクを掲載しておきます。
・「[日本語版]新しいKindleパブリッシング・ガイドラインの変更点(バージョン2014.1)|EBOOK STRATEGY MAGAZINE」
変更点のまとめなども簡潔に述べられていて、新ガイドラインの方向性がよく分かります。
また、Amazonは日本語の電子書籍に特有の注意点や考慮すべきポイントについて、Appendixという扱いで別途PDFの資料を公開しています。以下、リンクを掲載しておくので併せてチェックしておきましょう。なお、こちらのリンク先もPDFへの直接リンクです。
・「Kindleパブリッシングガイド日本語サポート補足資料」
Kindle向けの電子書籍を作成する場合だけでなく、一般的な制作指針としても参考になる部分があり、有用な資料と言えます。
■SigilとEPUB 2
次はSigilについて。さて、SigilというEPUB制作アプリをご存じでしょうか。海外製のアプリですが、フリーウェアでMac版、Wndows版、Linux版があり、4~5年前には日本でもよく利用されていました。
このSigilについて、「でんでんエディター」&「でんでんコンバーター」の開発者である高瀬拓史氏が少し前に次のようなブログ記事を書いておられました。
・「EPUB編集ツール「Sigil」が苦境!? いったいどうなるの?|電書ちゃんねる」
この記事で注目したいのは「Sigilは使っちゃダメ」という点です。現在、日本で主流となっている電子書籍フォーマットはEPUB 3形式です。ですが、Sigilで制作できるのはEPUB 2形式で、日本の電子書店で流通させることはできません。
さらに、Sigilではアプリ固有のプロジェクトファイルのようなものが無く、EPUB形式のファイルを直接編集するのですが、SigilはEPUB 2形式に準拠するようにソースコードを変更してしまうのです。
例えば、でんでんコンバーターで制作したEPUB 3形式のファイルを、Sigilで開いて何もせず保存しただけで、EPUB 3形式ではなくなってしまいます。詳しくは高瀬氏のブログ記事をご覧ください。
今回のテーマの「情報の更新」に関連する話としては、最近電子書籍の個人出版に興味を持たれた方が、EPUB制作用の無料ツールを探そうと「EPUB 無料 制作ツール」などをキーワードにネット検索すると、検索結果としてSigilが上位に表示されてしまう、といったことがあります。
さらに、ある意味ここからが本題でもあるのですが、私の著書にEPIB 2時代に書いたSigilを使ったEPUB制作の技術書があります(「電子書籍らくらく作成PACK <EPUBテンプレート付き>」:技術評論社)。
著者の立場としては切ないものがありますが、この書籍買ってはいけません。書籍タイトルに「Sigil」や「EPUB 2」といった文言が入っていないので、回避する手がかりが少ないのでご注意ください。
ネット上の情報も書籍も、その当時としては有用だったものが、後の状況の変化で問題を引き起こすことがあります。
Sigilの件では、EPUB 3用の無料ツールにSigilを置き換えるようなめぼしいものが無い状況なので、まだまだSigilが検索結果の上位にランクされることが続きそうです。少しでも多くの方が、更新された情報を発信していくことが重要です。
■最後に
Sigilの件では、実際に私の姉がこのパターンに陥りました。姉は電子書籍の知識は無いのですが、知人の物書きの方がブログ記事を電子書籍として出版したいというご要望をお持ちだとかで、少し勉強を始めようと思ったらしいのです。
そこで買ってしまったのが、私の「電子書籍らくらく作成PACK」だったという…。とても他人事ではありません。
■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi
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