収益が指数関数的に急上昇する「AIぐるぐるモデル」とは?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月13日 13時17分
AI時代の価値創造の方法は?
企業の価値創造活動の仕方が変わった。『AIファースト・カンパニー』(原題「Competing in the Age of AI」、マルコ・イアンシティ、カリム・R・ラカーニ著、吉田素文監訳、英治出版)は、産業革命以来続いてきた大量生産という価値創造活動の在り方から、新たな価値創造活動の在り方に産業界が移行し始めたことを宣言した最初の本だと思う。
これまでの企業活動は、大量生産という方法で価値を創造してきた。製品を一つ一つ生産するよりも大量に生産することで、一個当たりの生産コストが下がる。つまり大量に生産することで、価値を創造できるわけだ。製造業は当然のことながら、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売業でさえ、この大量生産的な考え方で価値を創造してきた。
ところが、この大量生産という方法には1つ問題がある。規模が小さいうちは創造される価値は大きいが、規模が大きくなるにつれ創造される価値の増加率が小さくなっていくのだ。経済学で言うところの収益逓減の法則だ。(図の中の「伝統的なオペレーティング・モデル」)
一方でAI時代の価値創造の方法だと、収益は逓増する。規模が大きくなればなるほど、指数関数的にもうかるようになるのだという(図の中の「デジタル・オペレーティング・モデル」)。
●AI時代でのみ有効? 収益が倍々ゲームになるワケ
なぜそのようなことが可能なのか。本の中では「AIファクトリーの好循環」という言葉でこの現象を説明している。AIファクトリーというオペレーションの仕組みでは、AIで作業を自動化するだけでなく、人間が行ってきた判断さえもAIで自動化することで、スピード、コスト、正確さの面で、より効率的な実行が可能になる。効率がよくなれば利用客が増え、事業が拡大し、ネットワーク外部性が働きやすくなる。そうなればプラットフォームの価値がさらに高まり、より多くの顧客を引き付ける。
そしてこのサイクルが回り続けることで、指数関数的に価値が高まるのだという。AIがほぼ無人の先進的な工場のように勝手に価値を生み出し続ける。なので著者はこの現象をAIファクトリー(工場)と名付けたのかもしれない。
この「AIファクトリーの好循環」の現象を、エクサウィザーズの大植択真常務取締役は、著書『Web3時代のAI戦略』(日経BP)の中で、「AIぐるぐるモデル」という言葉で表現している。同書は『AIファースト・カンパニー』の原書『Competeing in the Age of AI』に大植氏がインスパイアされて書いた本だ。
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