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「F1への技術提供」の舞台裏 「5000億円の収益」を支えるレノボのITインフラとは?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月15日 13時8分

 M&TCにはメディアエンジニアリング、テレメトリーなどといった部署があり、ETCと連携してさまざまな業務をするのだ。レノボのハードウエアを活用してETC側で現場の映像や音声などを編集する。それをM&TCに送ってさらなる編集を施し、完成したものを国際映像としてテレビ局やインターネット配信事業者、F1本体などに提供するという。

 車載カメラの映像が中継に映し出されるが、その時に、車速、ギア、アクセルとブレーキ開度などの情報を知ることができるのは、M&TC内にあるレーシングシステムエリアに従事する技術者によって処理され、グラフィックチームに転送されているからだ。

 気になるのはタイムラグだ。英国と日本は距離がある上、ただでさえ高速走行をするF1は展開が速いので時間差の発生はできるだけ抑えたい。F1の担当者によると「レノボの技術でほぼリアルタイムに発信できています。タイムラグは、鈴鹿と英国の往復で260ミリ秒(=0.26秒)なので、ほとんど時間差がなく送れていると考えています」という。

 日本GPの場合は、鈴鹿からまずシンガポールに送られ、その後マルセイユに到達。それから1つはM&TCに直接行くのと、さらにフランクフルトを経由するルートを作った。このスピードは、レノボと同じF1の公式パートナーであるタタ・コミュニケーションズの技術も貢献しているそうだ。例えばテレビのニュース番組を見ているときに、外国の取材現場とスタジオのアナウンサーが中継のやりとりをする中で、タイムラグを感じることがよくある。そう考えるとF1でのタイムラグの短さは驚異的だ。

 F1の中継では、車載カメラの映像以外でも、コーナーを曲がるマシンの様子がスローモーションで放送される。そのために2台のスーパースローモーションカメラを準備しているほか、3台のピットウオールカメラ、無人のリモートカメラなどを駆使してさまざまな角度から映像が見られるように工夫しているのだ。映像を確実にETCに送るため38基のアンテナをサーキットごとに設置。F1の音を感じてもらうため147個ものマイクを設置している。

 1レースあたりのデータ転送量は500TBに上る。市販のBlu-rayレコーダーの容量は1TB~3TBであり、普通に使えば容量がいっぱいになるまで数年はかかることを考えると、F1のデータ量がどれだけ膨大なのかが分かる。全てのデータはレノボのサーバに入り、そこから、さまざまな用途に使われている。

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