生成AIで死者を“復活”させるビジネスは人を救うのか 指摘される懸念とは?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月27日 6時20分
というのも、亡くなった人といつでも普段通りに対話できるようになることで、人の精神衛生に害を及ぼす可能性があるというのだ。家族など大事な人が亡くなったとき、人はその悲しみを受け入れ、克服していく。そして自分の人生を前進させていく。AIで死者を復活させることに対して、「忘れるという行為は健康的である」と主張している報道もある。
米国ではこうしたサービスが、心理学の研究対象にもなっている。コロラド大学のジェッド・R・ブルーベイカー教授らの研究では、こうしたサービスが死者の存命中に生成したコンテンツを反復するのではなく、新規コンテンツを生成する能力があることから、このようなサービスに使われるAIを「生成ゴースト」と呼んでいる。
生成ゴーストと対話を続けると、現実社会との関係に混乱が起きる可能性もあるとこの論文は警鐘を鳴らす。論文を引用すると、「例えば、生成ゴーストの広範な採用は、労働市場、対人関係、宗教組織など、現代社会の基礎を根本的に変える可能性があります」という。
また、故人の情報を学ばせて生成する場合は、倫理的な課題もある。プライバシーの問題もあるし、亡くなった人が死後に自分が復活することを望むかどうかという問題もある。こうした議論は今後さらに活発になるだろう。
生成AIを使えば、ディープフェイク画像を簡単に作れるので、中国などでは画像を不正に使って有名人を復活させるケースも出ている。著作権や肖像権を侵害するこうした行為が批判を浴びているのは言うまでもない。
新しいテクノロジーの登場は、ビジネスチャンスであるのと同時に、考慮すべき課題ももれなく付いてくる。今回の新しいサービスは、人の死が関わっているだけに慎重な議論とともに展開されていく必要があるだろう。
(山田敏弘)
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