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「一蘭」幹部に聞く カップ麺「一蘭 とんこつ」の開発で譲らなかったこと

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月10日 15時13分

 「こうした取り組みが徐々に馴染んでくるんですよね。その上で行動に現れて、プライドに変わるんですよ。例えば、ミスをそのままにしていてはいけないとか。仕事にこだわりが生まれてきて、職人気質のようなスタッフが育っていきます」

 日常のこうした取り組みによる理念の浸透が、一蘭の組織をより強固なものにしている。さらに言えば、フィロソフィルの共有なくして、真のビジネスパートナーになることは難しいのかもしれない。これは店舗運営にも通じる話で、国内外全てフランチャイズではなく直営店である。

 また、海外店舗は日本と同じスタイルで、味も基本的には変えていない。それでも、米国、香港、台湾それぞれの国で受け入れられている。特に台湾での人気は絶大だ。

 「2017年に1店舗目をオープンしました。その当日は雨でしたが、お客さまがかなり並んでくださっていました。それどころか、この24時間営業の店には13日間、行列がいっさい途切れず、常に満席状態が続いていました」

 なお、台湾では物価高に関するニュースを報じる際、しばしば物価指数として一蘭のラーメン価格が引き合いに出されるそうだ。それだけ現地の人々の生活に深く入り込んでいるのがよく分かる例だろう。

●数字を追わない

 前編の記事で見たように、一蘭は業績好調である。経営陣はさぞかし数字目標に厳しく目を光らせているのではないかと思っていた。ところが同社には「数字を追わない」という考え方があるそうだ。具体的に言うと、利己的な欲で数字ばかりを追いかけ、もうけを優先するような考えを排除している。

 山田氏はカップ麺「一蘭 とんこつ」の商品開発を例に挙げた。

 「引き合いは強く、コンビニと組めば一気に稼ぐことができたかもしれません。でも、私たちはそれを好まなかった。だから時間をかけて自前で開発し、納得のいくものができるまでオファーを断りました。当社には食品研究所というチームがあって、そこが何年もかけてスープもタレもこだわって作りました。具材の議論も当然しましたが、フリーズドライのような中途半端な具を入れるのであれば、当社の味だけで勝負しようとなりました」

 目先の利益をとらないという考え方は、経営陣に限らず、末端の社員にまで行き届いている。

 「当社は接待禁止ですし、モノをもらうのも極力お断りします。年賀状も出しません。このスタンスはそういったところから来ているのです」

 株式上場もする予定はないと断言する。そこまで徹底するのは、自らのアイデテンティティが損なわれないようにするためだ。理念を守り、唯一無二の存在であり続けることが、会社の発展にとっても不可欠だと考えている。

 一蘭のWebサイトには、次のような一文がある。

 「幸せ満ち溢れた高い人間性を持つ人を育み、世の中に喜びや価値を提供します」

 一杯のラーメンでこれを体現する。創業以来、今までそれを愚直に続けてきた。結果、福岡から全国、そして世界中に広がって、多様な人たちに愛されるまでになった。この哲学と志は今後もブレることはない。

(フリーランス記者 伏見学)

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