NTT東と東大が連携 IOWN推進室長に聞く「リモートバイオDXの展望」
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月3日 8時15分
産学連携はこの数年で進んだ。NTT東が包括的な協定を締結するのは北海道大学、東北大学、会津大学、新潟大学に次いで5例目。東大も日立製作所、JR東日本、ダイキンなど企業との連携を増やしており、今回が13社目だ。
●高速送信が可能に
IOWNで、東大医学部附属病院など医療施設がある本郷キャンパスと、千葉県柏市にある東大の医学関連の研究施設を将来的につなぐことによって、病院で取得した患者の病理データ画像を遠隔地で解析すること、逆に(2017年にノーベル化学賞が授与された生体内の構造を染色することなく生のまま凍らせて観察する)クライオ電子顕微鏡のある柏で撮影された画像データを本郷に送って解析することなどが可能になる。
いままで画像データはデータ量が大きいため伝送することが難しく、ハードディスクに記憶させ、バイク便で運んでいたという。
NTT東によると、100Gバイトのデータを東京、大阪間を想定した模擬環境で送った場合、従来のやり方(TCPIP/FTP)では転送時間が80分もかかっていた。これをIOWNによるRDMAでの高速転送をすると、わずか1分で送れたという実験結果も出ている。つまりこれまでより80倍も高速で送れるということだ。
IOWNは2020年に米国の半導体メーカーのインテル、ソニーなども加わったコンソーシアム(IOWNグローバルフォーラム)が立ち上がり、NTTだけでなく国際的な連携を組みながら開発を進めている。NTTは1999年にサービスを開始して一時は大ヒットしたものの、日本人だけの技術者で開発したために世界標準化に失敗した「iモード」の苦い経験がある。それだけに、同じ轍を踏まないように、IOWNは実用化に向けては国際的な連携を意識している。
●ゲームチェンジの可能性
新國室長はIOWNの特徴として(1)これまでより125倍の高速で大容量データを、遅れることなく送信可能であること、(2)消費電力がこれまでのものより少ないという2大メリットを挙げる。
「IOWNの将来の姿である光電融合は研究開発中ですが、高速、大容量の送信は可能なので、今回の画像データの東京・本郷と千葉・柏間でのデータのやりとりに成功すれば、IOWNのユースケースとして画期的なものになります。世界的に見てもフィールドに実装できれば挑戦的な取り組みで、こうした事例が増えてくれば、大容量高速通信のゲームチェンジになります」と大いに期待している。
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