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「黒づくめの組織」が起爆剤に? 『名探偵コナン』の映画がヒットし続けるワケ

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月27日 8時10分

 総集編の映画化自体は他のアニメ作品でも行われているが、『名探偵コナン』では独自の要素を組み合わせ、この手法を恒例化・パターン化している点に新規性がある。

 具体的なスケジューリングは以下の通りである。映画のエピローグで次回作のスポットキャラクターを発表し、11月から12月にかけて映画タイトルとキービジュアルを公開する。1月には総集編映画を公開し、後に放送や配信も行う。3月後半から4月にかけては特別番組の放送や過去作品の再放送を実施し、4月中旬に本編の新作映画を公開するというパターンを恒例化している。

 このサイクルにより、コアなファン層の期待を高めつつ、新規層やライト層、さらには一度離れていたリターン層も自然な形で映画への興味を持つようになる。前述した継続性と、毎年映画を放映できる体制・環境があってこそではあるが、ファンを維持し、新たに呼ぶという点で恒例化できている点は強みである。

●映画公開に合わせた新設定の公開 「原作連動」のパワー

 プロモーション活動のみでは、2018年以降に見られた急激な人気上昇を説明するには不十分である。長年に渡り築き上げたファン層の基盤と、綿密に計画されたプロモーション活動に加え、大きな役割を果たしたのが原作の幹となるストーリーと連動した要素の強化である。

 2018年以降、それまで伏せられていた設定やキャラクター間の関係性が漫画連載において次々と明かされ、ストーリーの中心にある幹に転換点が訪れた。そして映画作品においても、原作のストーリーや設定と深く関わる要素が強化されるようになった。

 長年にわたり人気を博してきた漫画作品の映画化においては、従来、原作の進行に影響を与えないようパラレルワールド的な設定で製作されることが多かった。代表例は連載期間中に公開された『ドラゴンボール』映画シリーズである。名探偵コナンの映画作品も、初期は原作との関連性を最小限に抑え、ほぼパラレルワールドと呼べる扱いであった。しかし2018年前後を境に、原作の内容やスポットライトを浴びているキャラクターと映画との関係性が強化されていった。

 この原作連動の強化は、単に連載の内容やタイミングが合致しただけでなく、マーケティング上の狙いも存在していたと考えられる。

●「黒ずくめの組織」が起爆剤に?

 過去の興行収入推移を見ると、2009年、2016年、そして2023年が大きな転換点となっている。2009年は長らく続いた停滞期を脱し、30億円台の興収を安定的に確保するきっかけとなった。2016年には前年比約1.5倍の50億円を初めて超え、さらに2023年には驚異的な100億円を突破する記録的な興行収入を残した。

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