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「290円ラーメン」終売でもまだまだ安い幸楽苑、なぜコロナ禍が明けても不調が続いているのか

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月29日 6時30分

 東日本で収益を上げ、その資金を基に出店を続ければ西日本で店舗を拡大できたかもしれない。だが、低価格戦略が利益を圧迫していた。報道によると、発売当初に売り上げの2割を占めていた290円の中華そばは、次第に3割を占めるようになり、注文客が増えていった。売上高は伸び続けた一方、利益率は低下傾向にあったという。そして2015年、原材料費や人件費の上昇に耐えられず、幸楽苑は同商品を終売。現在、中華そばの値段は490円である。

 安さ目当てで訪れる客が多かったことから、値上げ後は客離れが進んだ。2016年3月期における国内直営店の既存店客数は、前年比で5.9%減少しており、早くもその影響が出ていることが分かる。幸楽苑はそれまでの拡大路線を取りやめ、不採算店の閉店を続けた。

 2017年3月期から2020年3月期までの間、ラーメン事業における直営店数は526→513→498→427と縮小している。コロナ禍でも、既定路線だった事業規模の縮小を続けた。2020年3月期から2024年3月期の業績は次の通りである。

売上高:約382億円→約265億円→約250億円→約254億円→約268億円

営業利益:6.6億円→▲17.2億円→▲20.4億円→▲16.8億円→3300万円

 一見、コロナ禍による業績の悪化に見えるが、実は既存店の成績も芳しくない。2021年3月期の既存店客数は前年比で74.4%にまで落ち込んだ。消費活動が正常化した現在でも戻っておらず、2024年3月期の客数は2020年3月期比で73.5%と回復していないのだ。値上げにより客単価は20年3月期比で15.0%増えたものの、客数の減少分を回収できず、既存店売上高はコロナ禍前比で84.5%にとどまっている。

●新興勢力の台頭が原因か

 幸楽苑に客足が戻らない現象は、昨今におけるラーメン業界の活況を考えると異常に映る。参考までに、2024年2月期における日高屋の客数はコロナ前比94.5%であり、客単価増もあって売り上げは以前の水準を超えている。同様に餃子の王将も2024年3月期の客数はコロナ前比94.3%である(各社月次報告をもとに筆者が算出)。

 幸楽苑が苦戦する要因としては、新興勢力の台頭が考えられる。近年、ロードサイドでは横浜家系で知られるギフトHDの町田商店や、濃厚な豚骨スープが売りの山岡家などが店舗数を拡大している。

 ギフトHDの場合、町田商店の名を直接冠さない系列店(プロデュース店)も含めれば、ここ5年間で300店舗近く拡大し、現在は国内で700店舗以上展開している。また、北関東では小規模業者や個人経営による話題店も多い。こうした個性の強い新興勢力を前に、幸楽苑は存在感を失ってしまったのではないだろうか。

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