ぷかぷか、ふわふわ! なぜ「未来のレモンサワー」からレモンが浮かんでくるのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月4日 6時40分
「これまでにないチューハイをつくりたい」という構想はあったものの、まだ商品の形になっていない。どうなるか分からない状況の中で、開発に十分な時間を割けないといった事情があったようだ。
もちろん、開発に時間がかかったのはこれだけではない。ほかにも、大きな理由が3つある。1つめは、原材料の調達である。アサヒビールは創業135年になるが、RTDにおいて固形物を入れるのは初めてのこと。液体をつくるのはプロ中のプロであっても、液体の中にレモンを入れることは別次元の高いハードルがあったようだ。
原料の調達先であるサプライヤーを見つけなければいけない。これも初めての経験ということもあって、想定以上に難航する。試作を何度も試みた結果、衛生面や品質を高めるためにポストハーベストフリー(収穫後の農薬不使用)のレモンが適していることが分かってきた。しかも多くの人に楽しんでもらうためには、数も欠かせない。
開発を担当している山田秀樹さん(マーケティング本部新ブランド開発部)は世界中を飛び回って、理想のレモンを探すことに。現地に足を運ぶものの、「ウチでは無理。ダメダメ」と断れてばかり。そうした中で、中国四川省にあるサプライヤーにたどりついた。農薬を使っていないレモンを扱っていて、しかも数も確保できる。ようやく、原料の調達にメドがついた。
開発に時間がかかった2つめの理由は、機械とシステムの導入である。これまでにない商品なので、新たな機械が必要になってくる。機械メーカーに専用のモノをつくってもらうのに、どうしても時間がかかってしまったのだ。
このような話を聞くと、「RTDの新商品というよりも、全く新しいジャンルの商品をつくってるみたいだね」と感じられたかもしれないが、その通りである。開発には計61人が携わっていて、新しい機械を導入するとなると、会社はそれなりのコストをかけている。開発メンバーとして「あ、うまくいきませんでした。すみません、てへぺろ (・ω
●最大の課題は「数」
そして、3つめの理由がレモンの状態である。フタを開けるとなぜレモンが浮かんでくるの? と思われたかもしれないが、その仕組みはそれほど難しくない。レモンは缶の底に沈んでいるが、フタを開けると炭酸の発泡によって「ぷかぷか」または「ふわふわ」と浮いてくるといった原理である。
フタを開けたのにレモンは沈んだまま――。とならないようにするには、どうすればいいのか。レモンの大きさ、重さ、厚さなど、ちょっとずつちょっとずつ調整しなければいけない。何度も何度も試して、浮かんでくる形状が分かってきた。
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