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ちぐはぐでも「目標はメンバーが立てる」 全国制覇多数、女子バスケ名門校を率いる敏腕コーチのマネジメント術

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月24日 8時0分

遠香氏: ほとんど聞かなかったですね。特に、部活でその考えを採用しているところはかなりめずらしかったはずです。

 少し話しがそれるのですが、大学院在学中にも少しだけ東京成徳高等学校女子バスケチームの指導に関わっていました。スポーツって、本来楽しいはずのものじゃないですか。でも、当時の部員たちは、一生懸命練習はするけど楽しくなさそうなんですよね。過去に先輩たちが築いた実績に囚われて、自信を失っているように見えました。その様子を見て「みんなポテンシャルに溢れているのに、もったいないな」と思って。

 私がコーチをするなら、まずはこの状況を変えたい。そのためには、過去や周りに左右されない、チームの軸になる考えが必要だと考え、理念を作ったのです。

佐藤氏: 僕が学生のときも、遠香先生のような方が指導をされていたらもっと部活が楽しかっただろうな(笑)。ちなみに、どんな理念をつくったのでしょうか。

●いたってシンプルな理念のワケ

遠香氏: 「勇気」と「思いやり」。すごくシンプルでしょう。でも、バスケチームとして成長するためにも、人として成長するためにも、この2つは欠かせません。また、練習や試合を見ている側も、部員たちが勇気と思いやりを持って汗水流している姿を見ると、感動しますよね。

佐藤氏: 理念をチームの成長だけでなく「自分たちの成長のため」に活用するのは分かりますが、見ている人のことまで考えるんですね。

遠香氏: もちろん考えますよ。純粋にバスケットをみたいなら、プロチームの試合を見たほうがいいじゃないですか。では、なぜスキルも経験も発展途上な学生の試合を観に来てくれる人がいるのか。私が学生を指導するときは、そこまで考えて行動するように伝えています。

佐藤氏: 理念をただ伝えるだけでなく、学生たちがきちんと納得できるように落とし込んでいるのですね。

遠香氏: 私たちコーチの仕事は、いわゆる「魚を与えること」ではなくて「魚の取り方を教えること」ですから。

 食事指導を例にあげると、「これを食べなさい」とメニューを強制するのではなく、体作りのためには、どんなものをどれだけ食べたらいいかを教えて、自分でメニューを考えられるように指導していきます。

●目標はメンバーが立てる――ちぐはぐな目標が出てくることも

佐藤氏: 遠香先生が、理念をとても大事にされているのは分かりました。ただ、名門校として成果もあげていかないといけないですよね。遠香先生がコーチとして就任して以来、東京成徳中学校は何度も全国制覇を達成し、再び全国屈指の名門校として各地に名を轟(とどろ)かせていきます。成果をあげるためのチームの目標は、どのように設計したのでしょうか。

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