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水平対向+シンメトリカルAWDをアイデンティティーとして取り戻すスバル

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月10日 8時48分

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ようやく見えてきたスバルの未来戦略

 実は、スバルの戦略がずっと分からずにいた。確か5年くらい前にスバルの人に「スバルは一体CAFE規制をどうやってクリアするつもりなのか?」と聞いたことがある。以来、この件は繰り返し何度も質問してきたのだが、得心のいく答えは得られなかった。

 しかし5月28日、トヨタ、マツダ、スバルの3社は都内のイベントホール「ベルサール渋谷ガーデン」にて「マルチパスウェイワークショップ」を開催し、そこでスバルの藤貫哲郎CTOの説明を聞いて、ようやくいろんなことがつながった。

●スバルの現状 BEVでZEV規制対応

 順を追って説明しよう。まず、水平対向ユニットの燃費の話からだ。日本人が日本で暮らしていると、水平対向には全く燃費が良いエンジンという印象はない。しかしながら、彼らの圧倒的メインマーケットである米国では、水平対向は低燃費エンジンと評価されているらしい。

 考えてみれば彼らの「燃費が悪い」の基準はたぶん5リッターV8だ。悪いのレベルが違う。日本人はトヨタのリッター36キロ走るハイブリッドの燃費を見慣れてしまっているから、スバルの燃費がよく見えないということは多分にあるのだろうと思う。逆に言えば米国の人々から見ると、客の立場としてスバルの燃費には何の文句もないのだ。

 では規制はどうなっているのかと見れば、米国ではこれまで規制のメインとなっていたのはZEV規制であり、ZEV規制をクリアするにはBEVを規定比率分売る以外にない。総販売台数におけるBEVの比率だけが規制される。もうひとつのCAFE規制は、2020年から厳しくなった。それ以前との比較で40%改善の大幅な厳格化だ。

 とはいえその規制値は1ガロン当たり35マイル。日本になじみのある表記に計算し直すと14.8キロ/L。例えば米国で売れているレガシイアウトバックはWLTCで13.0キロ/Lで、完全にクリアはしていないものの、クレジットにおびえるほどの差ではない。

 ちなみにCAFE規制とは「Corporate Average Fuel Efficiency」の頭文字を取ったもので、その会社が規制地域で販売したクルマの平均燃費を規制するもの。少量販売のクルマがゼロエミッションだとしても平均は下がらない。要するにたくさん売れるクルマの燃費が良くないと困る。

 お客は満足しているし、規制上もさほどの問題はない。だからICEモデルの燃費は実質的に関係ないといえたのだ。一方で、スバルは、昨夏発表された新経営体制において、2030年の電動車販売比率を「バッテリーEVのみで50%」へ引き上げ、120万台の全世界販売台数に対して「60万台のバッテリーEVを販売することによって実現する」と、目標を上方修正した。このように、ここしばらくスバルが打ち出してきた経営方針はBEV重視の方向性であったことも、ZEV規制への対応と考えれば納得のいく話である。

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