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「育休はなくす、その代わり……」 子なし社員への「不公平対策」が生んだ、予想外の結果

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月4日 6時35分

 「マッチングアプリ」やら「婚活イベント」やら「恋愛を語る会」やらをするのも結構ですが、「結婚したくてもできない状況」にも手を打つべき。それをせずして「若者たちが結婚したくなる“かもしれない”戦略」を続けるのは「結婚したくてもできない人たち」の排除です。

 「少子化対策」と銘打つのであれば、蜘蛛(くも)の糸を張り巡らせるように「産める社会」を構築する必要があるはずです。政府が増やしたいのは「正社員の子」だけなのでしょうか。

 「賃金が高く、休みも自由に取れ、リモート勤務もできる、恵まれた企業」だけなのでしょうか。

 そもそも結婚観や夫婦のカタチが変わってきているのに、「子を増やす」=「とにかく結婚!」という思考回路のまま動き続けているのです。異次元の少子化対策の正体もぼやけたまま時計の針だけが進み続けています。

 となんだか苦言のオンパレードになってしまいましたが、“子どもをなんとしてでも増やしたい熱”が全く感じられないのです。非正規雇用問題にも手をつけず、選択的夫婦別姓も認めず、婚外子の議論も行われていません。婚外子にはさまざまな意見があるのは重々承知していますが、議論のテーブルにも載せないのはいったいなぜなのでしょう。

 少子化対策という美しい言葉を使った「票集め」だけが行われている。少子化は国の問題なのに、「妻、夫、夫婦」という個人の問題に矮小化されている。そう思えてなりません。

 しかし一方で、「国」という大きな主語を、「街」や「会社」と小さい主語に変えると、かすかな「光」も見えてきました。「街のみんなで育てよう」と子育てしやすい環境をととのえ出生率を向上させた自治体もでてきましたし、育児と仕事の両立を会社経営の問題として取り組んでいる企業もあります。

 その企業の一つが、私が数年前に書いた「少子化対策の極論」に関するコラムを参考に、「全ての社員が休む権利」を作った、社員数800人の中企業F社です。

●「育児休暇はなくしたらいい」 F社を導いた“極論”

 私は長い間、健康社会学者として会社サイドと現場サイド両者の声を聞いてきてきました。その中で痛感したのは、「不公平感による生産性の低下」です。日本の産休制度は海外と比べても「ワーキングマザーに優しい制度」なのに、ワーキングマザーは常に肩身の狭い思いをさせられている。一方で、子どものいない人たちは不満や不公平感を抱き、企業の生産性向上の土台である「社員同士のいいつながり」が失われていました。

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