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「育休はなくす、その代わり……」 子なし社員への「不公平対策」が生んだ、予想外の結果

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月4日 6時35分

 そういった「人」のネガティブな感情や対応をなくし、全ての人が生き生きと働ける環境を作るには、「働く人たちの全員の権利」として職場を一定期間離れる制度設計を作るしかないと考えました。

 そこでたどり着いたのが「育児休暇はなくしたらいい」という少々刺激的な意見でした。

 育児休暇をなくし「働く人たちの全員の権利」として、10年に1度、1年間、誰もが休める制度を国が作る。育児でも、留学でも、ボランティアでも、海外旅行でも、介護でもいいので、通常の有給休暇とは別に、全ての社員が休めるようにする。

 誰もが「1年間、留守にする」ようになれば、国だって、その期間の補てんをどうするかをもっと真剣に考えるはずです。全員が“当事者”。いっそのこと政治家たちだって、“当事者”になって、一年間留守にすればいい――。といった内容をコラムで提案しました。

 そしてコラムの最後に「国が動かなくても“我が社”でできることがもっとあるのではないか? 企業のトップは是非とも知恵を絞ってほしい」とメッセージを書いたところ、F社から「もっと詳しく話を聞きたい」と連絡をもらったのです。

●メンタル不調の社員が増え「このままでは会社はつぶれてしまう」

 F社は、非正規雇用の正社員転換を積極的に進めたり、“隠れ介護問題”などにも早くから取り組んだりと「一人一人の社員に向き合う経営」を心掛けてきた企業です。

 ところが、リーマンショック以降、企業を取り巻く環境が激変し、メンタルの調子をくずす社員が急増。その中には役員も含まれていました。

 「このままでは会社はつぶれてしまう」――。危機感に抱いたトップは「まずは休もう!」を合言葉に、長時間労働の削減や有給休暇の消化率の向上などさまざま休む努力を重ねました。そして「目の前の女性社員を絶対に失いたくない!」という強い思いから「全ての社員が休む権利」を実現したのです。

●全ての社員が、1年6カ月「休む権利」を得た企業――どうなった?

 国が定めた育児休暇や介護休暇は経過措置として使いつつも、全ての社員が勤続年数による制限はあるものの最長で1年6カ月休める権利を持てるようにしました。F社版「サバティカル休暇」です。

 その結果、誰かがいなくても「お互いさま」が当たり前になり、育児と仕事の両立に苦労するワーキングマザーたちへの厳しいまなざしはなくなり、社員みんなで子育てする雰囲気が出てきたそうです。また、若手の離職率も下がったとか。「これは意外でした!」と役員たちはいい笑顔を見せてくれました。

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