国内リテールメディアの問題とは? ただのトレンドで終わらせないために
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月17日 13時30分
流通対策費とは、値引きや協賛金、リベートなど、流通構造の商流の中で発生する費用の総称です。この流通対策費は小売業者のために確保されているものですから、もともと小売業者に充てる予算が置き換わっただけで、リテールメディアへの投資として新たな予算が確保されているケースは少ないといえるでしょう。
新たな投資を呼び込むためには、メーカーが大きく確保しているマーケティング予算やメディア費を投資させる必要があります。しかし、前述のバイイングパワーでリテールメディアの出稿をさせるという活動は、メーカー側のマーケティング部の各種KPIを達成させることと、直接的なつながりはありません。
メーカー側がマーケティング面において何を達成したいのか、それを理解できなければ的を射た提案ができないため、マーケティング予算を投資させるのは難しいと言わざるを得ません。
●メーカーが期待するのは購買データドリブンの深いインサイト
広告主であるメーカーがリテールメディアに求めているものは、TVCMや大規模なSNSキャンペーンでの成果とは大きく異なります。
リテールメディアは他のメディアに比べて購買に近いタッチポイントでのメッセージングが可能です。それはすなわち、
・購買データ活用だからこそ発見できる顧客動向の分析/検証、深いインサイトの提供
・継続的な効果の可視化
・広告としての勝ち筋の再現性
などが期待されているということです。実際、Walmartが広告主に提供するこれらの要素は目を見張るものがあるといわれます。日本のリテールメディアはどこまで追い付けているでしょうか。
●消費者にとっての価値も落とし、低単価メディアに身を落とす
絶対に忘れてはならない視点がもう1つあります。
リテールメディアは、購買データを活用したターゲティングやその後の検証が可能なメディアです。他のメディア・広告が「興味関心」「意向・好意度」といった消費者の移り気な気持ちをデータとして収集しているのに対して、購買データは「消費者が実際にこんな行動をした」という意思決定そのもののデータです。
うまく活用できれば、メーカーのマーケティング部は予測や仮説といった不確実性の高い判断材料に頼らず、実際に起きた事実に基づいたマーケティングが可能になります。かなり高い精度でメーカーが重要だと考えるメッセージを消費者に届けられるでしょう。
一方で小売業者の立場には、顧客(消費者)の購買データをリテールメディアを通じてメーカーに提供する以上、消費者にとって快適な購買体験を保証する責任があります。
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