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オタフクが作った「“この味”に近いソース」を探すAI レシピ開発の属人化を解消

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月19日 6時30分

 また、新たに分光スペクトルで取得したデータも使用することにした。光を波長として表し、成分ごとの強さを見やすく配列するものだ。分析の精度が向上したほか、社員の主観や既存のカテゴリに縛られず、製品の特徴を把握できるようになった。

 従来の方法で仮に1件1時間かかっていたとすると、新システムの活用で5分に短縮できれば、ベンチマーク品の試作開発効率は7%向上し、年間442時間、309万円の削減につながる──というのが、当初描いた青写真だ。稼働から約1年。7%の目標には到達していないものの、効率化にはつながっているという。

●「属人化」と「有効活用できいないデータ」 2つの課題を解決

 味を数値化し、AI活用するというアイデアが生まれたのは、全社で取り組んだDX勉強会の場だった。研究室として何ができるかを考えたとき、業務課題を解決する案として挙げられたのだ。このアイデアの実現に向けて、同社の工場でIHIのコンプレッサーを使用していた経緯などから、IHIと共に取り組むことになった。

 もともと研究室では、試作開発におけるスキルの属人化が問題視されていた。勉強会やベテランが若手に実施する教育の取り組みなどはこれまでも実施してきたが、細かな味の出し方の理解にはどうしても時間がかかる。

 また、保管している膨大なレシピを有効活用できていないことも、もう1つの課題だった。年間数千件ものレシピが追加されていくが、その検索にも困難が伴うため、せっかくのデータを活用できていなかった。

 属人化の解消と、データの有効活用。この2つを同時に解決に導く手段が、AI活用だったのだ。

●データの不揃いが壁に

 当初は甘み、旨み、酸味、塩味、苦味の「五味」を表示できれば理想だと考えていたというが、適した分析器がないため断念。塩分やpH、粘度といった、取得可能な値を使用した。

 並行して、味覚センサーのテストも実施。こちらは官能評価とも一致し、精度としては比較的問題ないが、1日に10サンプルしか分析できない。膨大なサンプルを1日10件ずつ処理していくことは、費用対効果の観点から断念した。

 匂いのセンサーもテストを実施したが、現時点では適したものを見つけられなかったという。今後は性能の向上を待って、匂いのデータも取り込む意向だ。

 「特徴的なお好みソースを20品ほど用意し、その原料と、『五味』に関する官能評価を学ばせれば、ゴールを設定できるのではないか」当初はそう考えていたというが、サンプル数が足りず実現はしなかった。これまで五味の全てに関する記述をしてきておらず、データの不揃いも壁になった。また、味に関する記述と容器や包装に関する記述が混在していた。現在はデータを入力する際、味に関する情報とそれ以外を分けている。

●理想は「AIアラート」 さらなる活用に意欲

 今後、さらなるAI活用の予定はあるのか。「構想段階に過ぎない」としつつ、開発マニュアルを読み込ませて「こういうレシピを作ったら危ない」というパターンを学習させ、アラートを作りたいという。例えば、レシピにおける醤油の配合割合が高いと、低い温度で沸騰してしまい、調理の際に問題となりやすい。こうした失敗に陥りやすいポイントをAIで検知し制御するイメージだ。

 「議論を重ねて、今回のシステムの概要を作り上げはじめたのが4年前。AI活用ありきで始まった取り組みではなかったため、(IHIと)お互いのニーズやできることを理解するのに時間がかかってしまったが、この4年間でAIはより進歩している。もっとできることはあるはず」(吉田氏)

(小林可奈)

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