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『ぼっち・ざ・ろっく!』映画、なぜ人気? 漫画に「音楽」が重要なワケ

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月28日 12時20分

 コンテンツがまだ新しく、コンテンツそのものに非日常要素を持つ場合は別だが、日常的に消費可能なコンテンツとなった場合、そこからの大きな収益は見込みにくい。特に日本は映像の無料視聴環境が整っていることも影響している。

 漫画・アニメに明るくない人は、スポーツに例えると分かりやすいだろう。日常的に放送・配信しているプロ野球やJリーグを視聴している人は多くいるが、このチャネルから、各球団やクラブの収入に貢献する消費を行っている人はほぼいないだろう。

 しかし、いざスタジアム観戦となると、入場料や飲食の消費が見込める。スタジアムという非日常的な雰囲気も後押しとなり、グッズを購入する人も増える。これが非日常消費へ誘導する理由として代表的な例だ。

 「漫画・アニメ×音楽ライブ」も同様である。上述した漫画・アニメを元にしたライブイベントやミュージカルのイベントでは、アニメや映画で描かれたキャラクターの活躍が現実のステージで再現されており、ファンは作品の世界にさらに深く没入できる。それは先述したスポーツの例で示したように、会場限定グッズなどの関連商品への誘導も行いやすくなり、収益増へとつながる。また、このようなイベントはファン同士の交流を促進し、ファンコミュニティーの結束を強化する役割を果たす点も特筆すべき点だ。

 コンテンツを成功に導くには、上に提示した図のようにコンテンツ形態の軸と日常/非日常の軸で整理した面をバランスよく埋めていくことが重要となる。現在の市場環境では、日常消費だけでは十分な収益をあげられず、非日常消費だけでは認知度・知名度で後れを取るためである。

●2000年代に起きた変化

 漫画やアニメは長らく日常消費が中心であり、特に漫画における非日常消費は以前の記事にも触れたように、ほぼ存在しないといえる。

 しかし2000年代以降、エンターテインメント業界に大きな変化が訪れた。映画市場の拡大と「応援上映」という新しい鑑賞スタイルの登場により、映像分野での非日常的な体験消費が促進された。同時に、音楽ライブやミュージカルの人気も高まり、音楽領域でも非日常的な消費が活性化している。

 これらの変化により、エンターテインメント産業は新たな成長機会を獲得し、消費者により魅力的で没入感のある体験を提供できるようになった。『けいおん!』から『ぼっち・ざ・ろっく!』に至る音楽コンテンツの活用は、1つのモデルケースといえる。

 本稿では漫画・アニメ・音楽を中心としたメディアミックスについて考察した。この手法はエンターテインメント業界における作品価値の向上において重要な役割を果たし、ファンの期待を超える体験提供や作品の長寿化にも寄与する。

 時代の変化とともに新たな手法を生み出していかなければ、コンテンツの寿命は尽きてしまう。音楽に次ぐ新たな柱となる「形態」を開拓するのか、または漫画×非日常という新たな「特性」が開拓されるのか、興味は尽きない。

●著者プロフィール:滑 健作(なめら けんさく) 

 株式会社野村総合研究所にて情報通信産業・サービス産業・コンテンツ産業を対象とした事業戦略・マーケティング戦略立案および実行支援に従事。

 またプロスポーツ・漫画・アニメ・ゲーム・映画など各種エンタテイメント産業に関する講演実績を持つ。

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