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孫正義を37年“独占取材”した作家が知る実像 「1000年の歴史に名を残す人」

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月1日 5時30分

 『志高く 孫正義正伝 決定版』で井上氏は、孫氏本人に長年取材を続けるとともに、孫氏と関わってきた多くの関係者から話を聞いてきた。その中でも、今の孫氏が形作られたのは、高校を中退して渡米し、その後に進学したカリフォルニア大学バークレー校で学んだ時代だと指摘する。

 「極端な言い方をすれば、孫さんを作ったのはアメリカです。バークレー校はノーベル賞受賞者を多く輩出している大学です。学生時代に孫さんがやってきたことは強烈ですよ。日本で流行していたインベーダーゲームを、流行が去ったあとに安値で大量に輸入して、アメリカでビジネスとして成功させました。さらに、音声機能付き電子翻訳機を発明すると、ソフトウェアを設計してくれる教授を探して、時給で雇って開発にこぎつけました。手伝ってくれそうな教授を電話帳で調べたのですが、それで会ってくれる教授もおかしいですよね(笑)。バークレー校時代に培ったことが、間違いなくその後の役に立っています」

 井上氏がもう一つ注目したのは、孫氏を支えてきた人々だ。特に印象に残った人物の一人に、日本ソフトバンクの設立翌年から出版部門を支えた橋本五郎氏(故人)を挙げる。創刊したパソコン雑誌が危機に陥っていた時期に、日本ソフトバンクの求人広告を見て編集者として入社した人物だ。

 「孫さんを語るときに、橋本五郎さんは欠かせない人物です。孫さんは複数のパソコン雑誌を後発で創刊したものの、早々に返本の山を築きました。何とかしなければと孫さんが大量のテレビCMを仕掛けようと奔走する一方で、雑誌の判型を変え、内容をリニューアルするなどして成功に導いたのが橋本さんでした。孫さんは橋本さんと出会えて、橋本さんがいたから今の自分があると思っています。孫さんという人物が、同じ志を持った周りの人たちとの“同志的結合”によって作り上げられたことは、この本で知ってほしい点です」

●「反省すれど萎縮しない」

 ソフトバンクグループは6月21日、第44回定時株主総会を開催した。会長兼社長の孫氏は、AIが進化し、人類の1万倍の知的レベルを持つ「人工超知能」(ASI)の時代が10年以内にくると指摘。ASI時代に欠かせない、AIチップとAIデータセンター、AIロボットをグループ総力で推進していく考えを示した。AI革命の未来を語る孫氏のこうした発言は、井上氏にとっては驚くことではないという。

 「孫さんは、今日とか明日のことはよく分からないけれど、10年先や20年先のことは分かるとよく言います。早くからコンピュータが人類の叡智(えいち)を超えると話していましたから、見ている先が違うのでしょう。天才が頭の中で何を考えているのかは、僕にもよく分かりません(笑)。ただ、孫さんの根本の部分は変わっていません。ソフトバンクグループが巨額の損失を出したときに孫さんは『反省はするけれども、萎縮はしない』と言いました。会長兼社長だから反省はしなければいけないけれど、損失については自分の中で決着がついています。さらにその先がすでに見えているからこそ、萎縮しないのだと思います。これこそが、変わらない孫さんらしさではないでしょうか」

 AIの進化が続く中で、孫氏が何を成し遂げるのか。井上氏の取材もまだまだ続く。

 「ソフトバンクグループ社内にも、創業当時から孫さんを知っている人はほとんどいなくなりました。そういう意味では、私は証言者として伝える使命があります。孫さんは千載青史に名を残す人、1000年の歴史に名を残す人ですから、これからも書き続けなければいけないと思っています」

(ジャーナリスト 田中圭太郎)

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