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なぜ、基幹システムのリプレースは大失敗するのか 日本企業に足りない「ある役割」

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月23日 8時0分

 結果として、個別業務機能の固有要件を抑えきれずにアドオンが発生してしまったり、反対にERPの汎用機能に強引に業務を合わせ、ユーザー部門に不平不満が残ってしまったりする。あるいは稼働当初は順調に業務が回ったとしても、その後法令や事業環境が変わる中でプロセス・メンテナンスをスムーズに行えず、想定外の追加開発が多発するケースも珍しくない。

●デジタルと組織の不整合

 近年、BPMS(Business Process Management System:ビジネスプロセス管理システム)と呼ばれる、業務プロセスの設計・実行ツールが登場した。

 これにより、ERPが持つ汎用機能、企業固有システム内の各機能、個別業務機能に特化したピンポイント・ソリューション、RPAなどのIntelligent Automation機能をBPMS上で組み合わせ、エンドツーエンドで業務プロセスをデザインし、ワークフロー上で業務遂行のためのシステム機能を呼び出し、業務プロセスを回すことができる。

 またもう一つの特徴として、これまで視野から漏れがちであった、基幹システムの外側で実行される業務、具体的には表計算ソフトなどをベースとしたEUC(End User Computing)業務やメールのやり取りなども、BPMSのワークフローに取り込み実行することができる。デジタルのアーキテクチャ(構造・設計)は、図3で示す通りだ。

 こうした近年のデジタルアーキテクチャを前提とした場合、組織の観点でも機能別部門を横断し、エンドツーエンドで業務プロセスをデザイン、メンテナンスする役割が重要となる。この役割はグローバル企業ではプロセスオーナーと呼ばれる。

 しかしながら、多くの日本企業ではプロセスオーナーが不在であり、依然として機能別組織が強い権限を持っている場合が多い。すなわち、近年のデジタルアーキテクチャの潮流と多くの日本企業の組織アーキテクチャが不整合を起こしている。

 アーキテクチャのレベルで整合していない以上、いくら小手先の工夫をしたところでERPの真の活用は構造的に困難だ。このプロセスオーナーの不在こそが、多くの日本企業で基幹システムのリプレースがうまくいかない真因だといえる。

 このことに気が付き、危機感をもっている日本企業も少なくない。特に現行の基幹システム導入に数十億~数百億円を費やしたものの、抜本的なオペレーション変革に至らなかったと痛感している企業では、次期基幹システムへのリプレースを控え事前準備を進めている。

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