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クルマの乗り心地はもっと良くなる? カヤバのテストコースで感じた未来

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月6日 8時59分

 まずはソレノイドを停止させた通常のダンパーとして、荒れた路面の直線路を通過する。それでもクルマがしっかりしているから走行に不安はないが、乗り心地はやはりそれなりだ。ところがソレノイドの制御をオンにしてセミアクティブサスにした途端、快適性は大幅に向上した。そしてクルマの動きは落ち着き、ドライバーに安心感を与えることにつながったのだ。

●アクティブサスの乗り味は驚異的!

 だが、それよりも驚かされたのは、BMW5シリーズに搭載されたアクティブサスペンションだった。従来のサスペンションは外部からの入力(衝撃)を受け止め、吸収(減衰)するパッシブなもので、吸収の度合いを変えることでセミアクティブサスとしたのがティグアンに搭載された2ソレノイドダンパーだった。

 一方、アクティブサスペンションは、ダンパー自らが伸び縮みすることで積極的に姿勢を制御する。1輪だけ突き上げるようなシーンでは、残りの3輪のサスペンションを伸ばすことで、フラットな姿勢を保てることになる。

 もちろん応答性や発生できる力に限界はあるため、走行中の振動をすべて吸収することはできないが、かなりの部分で乗り心地を大幅に改善できる。

 実際にアクティブサスと通常のダンパー機能を切り替えて、周期的な凹凸のある直線路を走行してみた。通常のダンパーで走行した時には従来の高級車然とした乗り味で、荒れた路面を走っている感触を伝えてくる。

 ところがアクティブサスを作動させて同じ路面を走り抜けてみると、まるで路面の凹凸がキレイに消えてしまったかのように、車内を平穏な雰囲気へと変えてしまった。加速度センサーで計測してみれば、上下のGは完全に消えているわけではないけれど、体感的にはほぼ消滅してしまったかのようだ。

 しかし、このアクティブサスは油圧の制御に電力を大量消費することもあり、メルセデス・ベンツ以外はドイツの高級車メーカーでも採用が減っている傾向にある。ベアリングメーカーのTHKが開発したボールネジ型のアクティブサスは、フェラーリ・プロサングエが採用しているようだが、車重が重くなることと応答速度では油圧式に比べ構造的に不利となることは避けられない。

●立ち止まらずに進化し続ける姿勢

 このような高級志向の複雑なダンパーは収益性を高める要素となるが、カヤバが力を入れているのはそういった領域だけではない。

 ダンパーオイルも開発が進んでいる。カヤバが環境作動油と呼ぶ生分解性のあるダンパーオイルもエンジンオイル同様、粘度特性や潤滑性、耐熱性などの条件をクリアした上で、植物由来の原料によりカーボンニュートラルを実現し、リサイクル性にも優れたものへと仕上げている。

 コンベンショナルなダンパーはリードタイムを早めて生産性を高めることで、コストダウンとクライアントからの発注へのスピーディーな対応が可能になる。クリーンルームで組み立てられる電子制御可変ダンパーは付加価値を高めて収益性を改善できる。

 国内生産を強みとしていくには、製品と生産、両方の技術と品質で常に高次元を維持していかなくてはならない。中国からの撤退が続く製造業、とりわけ自動車産業で日本国内の生産量を増やすには、得意分野においても立ち止まらず、常に進化を続ける必要性がある。カヤバが実践しているのは、まさにそういうことであった。

(高根英幸)

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