1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「天橋立」もあるのに日帰り客だらけ どうする? 老舗のお酢メーカーが追いかける“2つの街”

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月9日 6時0分

「天橋立」もあるのに日帰り客だらけ どうする? 老舗のお酢メーカーが追いかける“2つの街”

老舗のお酢メーカーが観光振興のために打ち出した秘策

 京都府北部の丹後エリアで、ある地域創生プロジェクトが進行している。仕掛け人は、創業130年を誇る老舗お酢メーカー「飯尾醸造」の5代目当主、飯尾彰浩氏だ。「丹後を日本のサン・セバスチャンに」という壮大なビジョンのもと、過疎化に悩む地域を「美食の町」へと変貌させようとしている。

 世界的レストランガイド『ゴ・エ・ミヨ』に2店舗が掲載されるなど、着実に成果を上げつつある本プロジェクト。なぜ、お酢メーカーが町づくりに乗り出したのか。独自の戦略と、これまでの軌跡を聞いた。

●宿泊客を増やすプロジェクト

 京都府北部に位置する丹後エリア。宮津市、京丹後市、与謝野町、伊根町の2市2町で構成されるこの地域は、天橋立や伊根の舟屋など、独特の景観を誇る観光地として知られる。しかし、その魅力的な観光資源にもかかわらず、課題を抱えている。

 京都府の統計によると、2022年の丹後エリアの観光客数は約461万人。そのうち宿泊客は約86万人で、宿泊率はわずか18.7%にとどまるなど、日帰り観光が中心となっていた。

 さらに、観光客の平均消費額も低迷。2019年のデータになるが、京都市内の観光客の平均消費額が1日約2万円であったのに対し、丹後エリアを含む北部地域はその半分にも満たなかった。

 行政側も、道の駅である丹後王国「食のみやこ」をリニューアルオープンするなど、観光客を増やそうと施策を打った。ところが、飯尾氏は異なる視点を持っていた。「行政の取り組みは日帰り客の増加に主眼を置いたもの。しかし、それでは地域経済の本質的な活性化にはつながらないと考えた」

 むしろ、宿泊客を増やし、地域全体の経済循環を促進することが重要だと指摘する。そこで、「丹後を日本のサン・セバスチャンに」というビジョンを掲げ、地域の変革に乗り出した。

●認知度を向上させる狙い

 サン・セバスチャンとは、スペインのバスク地方にある人口約18万人のビーチリゾートだ。今では「美食の町」として知られ、世界中から多くの観光客が食文化を楽しむために訪れる。

 一方、丹後エリアも周辺の市区町村を合わせると人口は約20万人。大阪や京都からクルマで1~2時間ほどの立地であり、海と山に囲まれるなど、サン・セバスチャンと共通点が多い。

 2015年から「丹後を日本のサン・セバスチャンに」というビジョンを掲げて活動しているが、実は飯尾氏が真に目指したのは、サン・セバスチャンからクルマで30分ほどの距離にあるスペイン北部の小さな「ゲタリア」という漁村の成功モデルだという。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください