なぜ、ビール会社が「飲みづらいグラス」を開発したのか あえて“逆行”には意味がある
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月21日 8時5分
適正な飲酒を啓もうするには、どうすればいいのか。その取り組みのひとつとして、同社は今年の1月から「飲みづらいグラス」の開発を進めていた。とはいえ、繰り返しになるが、ビール会社としては“逆行”するような企画である。社内から反対の声はなかったのかというと、担当者は「なかった」ときっぱり。
う~ん、本当にそうなのか。反対の声がなかった理由を聞いたところ、「ふむふむ、なるほど」と思わずニヤニヤしてしまう答えが返ってきた。だいたい想像がつくかと思うが、ビール会社で働く人の多くは「ビールが大好き」である。たくさんのビールを毎日のように飲んでいたいといった人が多いようだが、社内で盛り上がる数値がある。「尿酸値」だ。
健康診断の結果、尿酸値が高ければ痛風などの危険性が高まるので、ビールの量を控えなければいけない(医療の詳細は割愛)。しかし、ビール党としては、それは悲しすぎる事態である。ゆっくり、楽しく、末永く、飲んでいたい――。太く短くではなく、細く長くという人が多く、飲みづらいグラスを開発することに反対の声はなかったそうだ。
●砂時計の形状した理由
飲みづらいグラスの開発は、どのように進んだのか。「カタチをどうすればいいのか?」といった議論から始まって、いろいろな案を出し合った。例えば、グラスにセンサーを搭載して、手を近づけるとグラスが離れていくようなモノはどうか。ものすごく重くして、簡単には持ち上げられないモノはどうか。
アイデアは30案ほど集まって、その中から砂時計のような形状に決まった。理由は2つあって、1つはビールの味わいや香りを感じたいから。もう1つは、ゆっくり飲めるから。「ビール」と聞くと、キンキンに冷えたモノをできるだけ速く飲んだほうがおいしいのでは? と思われるかもしれないが、同社が扱っているのは「エールビール」ばかり。ラガービールと比べて飲み頃の温度は高めなので「ゆっくり飲める」ことにこだわったのだ(ラガービールは6~8度、エールビールは8~13度がオススメとされている)。
砂時計のような形状に決まったものの、問題はくびれのサイズである。試作グラスを6種類つくってみて、実際に飲んでみることにした。内径5ミリ、6ミリ、7ミリ……をつくったところ、5ミリの場合、味や香りがあまり感じられないという課題があった。「ビールは点滴のように『ポタ、ポタ』と落ちてくるような感じでして。ゆっくりすぎるということで、却下となりました」(担当者)
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