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映画『ルックバック』成功から浮かび上がる、集英社の思惑とは

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月23日 8時10分

 このように、集英社は自社媒体で一度掲載して人気を博した読み切り作品や、人気漫画家の作品であるにもかかわらず認知度がそれほど高くない作品を「アニメ×配信」という形態で再び世に送り出そうとしている。今後も同様の取り組みは続くだろう。

●「読み切り作品×アニメ×配信」は今後も増える

 「読み切り作品×アニメ×配信」という形態は、作り手側にもメリットがある。1話完結で尺が短く、放送枠といったスケジュールの制約も比較的緩いため、クリエイティブを優先して画のクオリティーを上げることや、新しい手法に挑戦するといった試みを行いやすい。

 また、完結したストーリーを描くため、連載作品のアニメ化で生じる「後の展開との齟齬(そご)」や「連載作品に追い付いてしまう」といった問題も起きない。もちろん、収益性の課題は変わらず生じるが、さまざまな面でリスクが小さいといえるのだ。

 従って、制作会社としての実績を積む場となることに加え、次世代を担う人材が経験を積む場、挑戦する場としての機能を持つ可能性も秘めている。

 このように、読み切り作品のアニメ化は作者・出版社・アニメ制作会社それぞれにポジティブな影響を及ぼす。アニメ制作現場が逼迫(ひっぱく)しない限りは、今後も増加していくと考えられる。

 本稿では集英社の藤本タツキ氏や尾田栄一郎氏の事例を紹介したが、集英社はもちろんのこと、世に出し切れていない人気作家の読み切り作品・短編作品は多数存在する。

 日本のコンテンツビジネスの活性化、そして配信プラットフォームを通じたグローバルでのプレゼンス向上に向け、積極的に取り組む価値がある領域といえるだろう。

●著者プロフィール:滑 健作(なめら けんさく) 

 株式会社野村総合研究所にて情報通信産業・サービス産業・コンテンツ産業を対象とした事業戦略・マーケティング戦略立案および実行支援に従事。

 またプロスポーツ・漫画・アニメ・ゲーム・映画など各種エンタテイメント産業に関する講演実績を持つ。

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