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「EV優遇廃止」派のトランプを、イーロン・マスクが“支援”する本当の理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月26日 7時15分

「EV優遇廃止」派のトランプを、イーロン・マスクが“支援”する本当の理由

イーロン・マスク氏はなぜトランプ前大統領を支持するのか

 米国の大統領選が大変な展開になっている。

 まず7月13日に、ドナルド・トランプ前大統領が東部ペンシルベニア州で狙撃される暗殺未遂事件が発生。事件が検証される中で、7月21日にはジョー・バイデン大統領が「民主党と国の利益にとって最善」であるとして、大統領選からの撤退を発表した。

 そんな前代未聞の出来事が続く中、筆者が特に注目しているのは、世界一の富豪であるイーロン・マスク氏の動きだ。電気自動車(EV)大手テスラや宇宙開発企業スペースXのCEO、大手SNSのX(旧Twitter)のオーナーを務めるマスク氏は、最近、資産額2516億ドル(約40兆円)で世界一の富豪に返り咲いている。

 そのマスク氏はこれまで政治的に中立だと述べていたはずが、トランプ狙撃事件の直後に「私はトランプ大統領を全面的に支持する」と、Xに投稿した。さらに7月15日、トランプ前大統領に毎月4500万ドル(約70億円)を寄付する予定であることが明らかになった(本人は「その話はフィクションだ」と反論、実際の寄付額はそこまで高額ではないとも言われている)。そもそも、トランプ前大統領といえば、マスク氏のことを毛嫌いし、テスラなど環境に配慮したEVの普及にも反対の立場を鮮明にしている。

 自称“マスクウォッチャー”の筆者から見ても、マスク氏が何も考えずに寄付に乗り出すとは考えにくい。もちろんその動きには裏があるはずだが、今回はその思惑について深掘りしたい。

●EV補助金は必要ない?

 まずEVについて見ていきたい。現在米国では、EVを購入すると最大で7500ドル(約115万円)の税額控除が受けられる。米政府は地球温暖化対策として、EV普及のために補助金を出しているわけだが、トランプ前大統領は地球温暖化に懐疑的だと知られる。そして自分が大統領に返り咲いたら、「EV普及の義務を大統領就任の初日に終了させる。それによって米国の自動車産業を消滅から救い、米国の消費者のために自動車1台当たり数千ドル節約する」と、7月に行われた共和党の全国大会で大々的に宣言している。

 EV大手テスラを経営しているマスク氏にしてみれば、トランプ氏が大統領になれば、EVの補助金が削られ、会社の売り上げが減少するかもしれない――。にもかかわらず、トランプ大統領誕生のために全面支援するというのはどういうことか。

 それには理由がある。というのも、テスラのEVは以前ほどの勢いはないが、それでも米国では一人勝ちの状況が続いている。充電ステーションも各地に設置されており、実は今後、EV補助金が続けられたとしても、すでに人気であるテスラから見れば、補助金はライバル企業を利するだけに過ぎない。テスラは車両価格や製造コストの点で競争力が高いという自負もあり、今後さらにコストを削減して車両価格を下げる計画で動いている。

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