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セコい? 迷惑行為を防げるからOK? 訪日客激増で「二重価格」議論が過熱 失敗しない導入・運用のポイントを考える

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月29日 6時15分

●姫路城が打ち出した「価格差」は妥当?

 飲食店にとどまらず、例えば姫路城でも二重価格を検討しているというニュースがありました。姫路城は世界文化遺産であり、年間来場者のうち外国人観光客が占める割合も多い人気スポットです。

 施設を維持していくためには多額の費用がかかります。姫路城の場合、年間10億円以上がかかっているそうです。そのための資材の確保、職人の技術を継承する人材育成など、さまざまな投資が必要であり、現状の価格設定ではまかないきれないということで、姫路市長は二重価格も検討しているといいます。

 具体的には、外国人が30ドル(4600円)程度、姫路市民が5ドル(600円)程度の方向で検討しているそうです。価格差が大きいこともあって非常に話題になりましたが、これをきっかけに他の自治体や城でも二重価格設定についての論議が活発になってきています。

 そもそも、観光地での二重価格は海外でよく見かける取り組みです。筆者が先日訪れたドイツでも、人気スポットの一つであるノイシュバンシュタイン城の内部見学ツアーでは、通常価格以外に11種類の優待対象者がいて驚きました。基本的には、ドイツ国民を優遇する制度でした(ちなみに、周辺を歩くだけなら無料)。

 こうした施設では、いずれもが自国民や地元民と観光客との価格差が2~20倍ほどと幅があります。姫路城の想定している6倍程度はある意味、妥当な価格差かもしれません。

●価格差以外の付加価値も、浸透のポイント

 海外における二重価格は、世界的な文化遺産を守るために、一定以上の価格設定をしてオーバーツーリズムを防いだり、自国民の若者への教育啓もうのために学生を無料にしたりといった目的の他、外貨獲得などのために設定しているものがあります。導入目的はさまざまではありますが、世界ではある程度許容されており、日本がこれから各地で二重価格導入を進めていくこと自体は特に問題ないでしょう。

 ここで重要なのは先述した通り、観光客や外国人価格が「標準価格」であり、自国民や地元民は「特別価格」という考え方です。しかし、やはり日本では、同じ商品・サービスなのに地元民か観光客かによって価格差があるというのは納得がいかないと感じる人も多いでしょう。訪日客価格が通常価格といわれても「もうかりそうだから、価格を高くしているだけでしょう」という批判も出てきそうです。

 そのため、日本で二重価格を本格的に導入する場合には「日本ならでは」の制度設計にする必要があります。例えば「価格差を説明できるだけの価値付け」はその一つでしょう。

 飲食店であれば、単なる価格差ではなく、訪日客には日本酒をオリジナルのマスでサービスして、記念品として渡すとか、城であれば入城記念に城の写真がついたポストカードを1枚プレゼントするなどが考えられます。日本ならではの「おもてなし」をカタチにしてみるのです。モノでなく、スタンプやハンコ、いわゆる「御朱印」のようなものでも構いません。

 他の国であれば「これはツーリストプライスです」と説明するだけで良いかもしれませんが、やはり日本では日本ならではのおもてなし精神で訪日客を迎え入れるべきです。二重価格の場合は、その納得性を高めることがポイントでしょう。

 日本政府は2030年に訪日客数6000万人、消費額15兆円という目標を掲げています。これからますます拡大するインバウンド消費に関して、各企業は二重価格を適切に活用して拡大する市場に対応していく必要があります。

(岩崎 剛幸)

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