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ドンキ、爆発的成長の裏に「まじめにふまじめ」 AI活用、商品開発、顧客重視の社風を読み解く

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月31日 6時15分

 これらを実現するには、デジタルのみならず、アナログな調査手法や、店舗の経験・勘も考慮に入れる必要があり、PPIHはロジックと現場主義のバランスが素晴らしい、手本となる企業なのです。

●PBを「ピープルブランド」へと改称

 2023年6月期、PPIHのディスカウントストア事業におけるPB品の比率は17.3%で、近年大きく伸びを見せています。同社のPB戦略は、他の小売業が標榜する「粗利率向上のためにPB構成比を増やす」という方向性のみならず、商品戦略こそが、経営原理にある顧客最優先主義を体現するべきという信念を感じる取り組みです。

 例えば、ドン・キホーテは2021年に、プライベートブランドを「ピープルブランド」へと改称しました。「ダメ出しの殿堂」というWebサイトをオープンして、消費者からのダメ出しを積極的に募集する斬新なアプローチは、業界関係者を驚かせました。

 その後、同サイトは「マジボイス」というアプリとして生まれ変わり「正直レビュー」と「おしえて掲示板」という2機能を軸に展開しています。正直レビューは5万点以上の店頭商品に「いいよ!」と「ビミョー」による評価ができ、結果をランキングで公表。おしえて掲示板は、行きつけの店舗への要望から商品に関する疑問まで、幅広い内容を投稿できるコミュニティ型のコンテンツです。

 同社は、ダメ出しや指摘をネガティブなことと捉えず「お客さまの声」「商品開発のヒント」としてポジティブに捉えているようです。これは本質的かつ効率的なマインドといえるでしょう。マジボイスの開始から7カ月で集まった投稿は62万件にのぼり、同規模の調査をコンサル会社や広告会社に頼めば、ばく大なコストがかかることは容易に想像できます。さらに、報告書の納品までは数カ月を要し、時がたてばまた分析を依頼しなくては、施策が鮮度のないものとなってしまいます。

 一方、マジボイスには常に鮮度の高い声が膨大に集まってきます。「お客さま視点」という言葉は、多くの企業が掲げていますが、実際には本社の商品開発部の経験や、調査会社の情報などにのっとることも多く、顧客視点が欠如していることケースがあります。

 Googleマップや食べログなどにネガティブな口コミが入り、その対策としていかに良いコメントを増やして低評価コメントが目に付かないようにするかに注力する企業も多い中、PPIHは逆の発想で取り組んでいるのです。集客ではなく、商品開発や店舗運営の根幹に顧客の意見を生かすベクトル自体が、そもそも他社とは異なっています。

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