何もなさそうだから面白い? “働く旅”がじわじわ増えているワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月1日 7時30分
●おてつたびが提供する「非金銭的価値」
「おてつたび」は、従来の観光や短期雇用とは一線を画す。従来の観光は、地域の魅力を表面的に知るにとどまることが多く、著名な観光名所がない地域はそもそも旅行の選択肢に入らないケースも多かった。
一方、「おてつたび」は、旅の目的地と訪れる理由を各地域に作り出し、知名度の低い地域でも人が訪れる仕組みを構築している。
例えば短期雇用の場合、通常の仕事探しでは勤務条件が重視されるため、地方は賃金やアクセスの面で都心部に劣ることが多い。しかし「おてつたび」は、地域特有の「非金銭的価値」、つまりその地域でしか得られない体験を提供することで差別化を図っている。
実際、「おてつたび」を利用したユーザーと地域が交流を深めることで、これまでにはなかった“化学反応”も生まれている。具体的には、徳島県鳴門市の取り組みが挙げられる。鳴門市は「らっきょう」の生産地としても有名だが、高齢化や人口減少の影響で、収穫期の人手確保に苦労していた。
そんな中で、「おてつたび」を通じて応募した50代男性が関東から参加し、らっきょう農家を手伝った後、魅力に引かれて鳴門市に移住を決断。さらに、独立して起業し、らっきょうの加工品製造や魅力を発信する事業を始めた。
「『おてつたび』の存在意義として、人手不足の解消が挙げられる。ただ、それだけにとどまらず、利用者が地域の魅力を発信して、新しい商品を作っていく。こうした動きは、ものすごくいい事例だと考えている」(永岡氏)
●地域とつながりを持ち続ける
「おてつたび」のユーザーや事業者からは、どのような反応が寄せられているのか。過疎地域の事業者からは、「人材確保に助かっている」「素敵な人に出会えることが多い」といった声が寄せられているようだ。
一方、ユーザーの約6割が「おてつたび」終了後も、何らかの形で地域とつながり続けているという結果が出た。手伝った農家の作物を買い続けたり、働いた旅館で客として訪れたり。「おてつたび」先で結婚式を挙げた人もいるなど、潜在顧客の開拓にもつながっている。
特筆すべき点として、「マッチング率の高さ」が挙げられる。現状、100人の募集に対して、200人からの応募がある。しかも、そうした状況が長く続いているようだ。地元の人からすれば「アクセスの悪い場所にわざわざ……」と思えるような場所でも、旅行者にとっては「そこが良い」といった具合に、魅力的な目的地になっているようだ。
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