何もなさそうだから面白い? “働く旅”がじわじわ増えているワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月1日 7時30分
「おてつたび」は、ビジネスパーソンにも新たな可能性を提供している。このサービスをマーケティングに活用する例も増えているという。同社によると、新規事業担当者が一次情報収集のために農家へ行ったり、旅館向け機器の営業担当者が現場の実態を把握するために宿泊施設で働いたり、本業に直結する目的での利用も見られる。
●1人が何役にもなれる世界を目指す
ユーザー数と事業者数は順調に成長しているが、新たな課題も浮上している。永岡氏は「短期人材の活用や関係人口(地域や地域の人々と多様に関わる人々)の概念の啓発が必要だ」と指摘する。この啓発の必要性については、人口減少という社会問題が背景にある。
「日本全体として人が減っていく中で、この課題に早期に向き合う事業者をどれだけ作れるかが、地域の存続に大きく関わってくる」(永岡氏)
人口減少がさらに進行してから対策を講じても、手遅れになる可能性が高い。そこで、今から啓発活動を行い、短期人材や関係人口を創出するために受け入れ先を増やしていくことが重要だという。
「おてつたび」では、自治体との連携強化に注力している。地域の信頼を得ている自治体が間に入ることで、事業者の理解と参加を促進できるからだ。例えば、鳴門市の成功事例も自治体からの紹介がきっかけとなった。
人口が減少していく日本において、永岡氏は「各地に人、モノ、お金が循環する世界を作っていきたい」と語る。同社はミッションに「誰かにとって特別な地域を作る」を掲げている。誰もが居住地と出身地以外に好きな地域を複数持てる世界を作ることで、労働力として貢献したり、地域のモノを購入したり、1人が何役にもなれる世界観を目指す。
人口1億2000万人を前提としたシステムではなく、人が減っても社会がまわる仕組みを「おてつたび」で実現することが、同社の目指す方向性だ。「日本がこれから観光立国を目指すのであれば、各地域の魅力を残し続けることは、ひいては日本全体の価値を上げることになる」(永岡氏)
「おてつたび」は、テクノロジーを活用しつつ、人と人とのつながりや地域との新たな関係性を創出するプラットフォームとなっている。人口が減少していくなか、このサービスが提案する新しい人材の流動モデルは、重い課題に対するひとつの解になるかもしれない。
(カワブチカズキ)
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