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「100円セール」をやめたミスド V字回復の裏に3つの戦略あり

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月16日 6時15分

 この間、ミスドは不定期で「100円セール」を実施し集客を図ったが、セール期間以外の売り上げが低迷し、2016年に終了した。なお、ダスキンは低迷の背景として「以前の1等地が1等地でなくなる商圏の変化もあった」と主張しており、業績悪化を前に不採算店の閉鎖を進めてきた。

 一方、外食チェーンのほとんどが苦しんだコロナ禍では業績が伸びた。2020年3月期から24年3月期におけるミスドの国内チェーン全店売上高及び店舗数は次の通りである。

チェーン全店売上高:771億円→780億円→929億円→1055億円→1248億円

店舗数:977→961→979→998→1017

 同期間中は発売した商品がいずれも好調な売れ行きとなった。また、テークアウト需要の高まりも追い風となった。前述の通りミスドはファミリー層を主体とし、売上高に対するテークアウト比率はおよそ6割だ。外出自粛ムードの中、家族で楽しめるものとして以前よりテークアウトとの相性が良かったミスドが注目されたのだろう。何回か実施した値上げも売上高をかさ上げした。

●高付加価値化と食事メニューに注力

 コロナ禍が明けた2024年3月期も好調が続いていることから分かるように、ミスドのV字回復には巣ごもり需要以外の要因もある。例えば、100円セールを終了して以降、商品の付加価値を高める施策を行ってきた。

 その一つが2017年から販売している他社との共同開発商品「misdo meets」だ。第1弾では京都の宇治茶専門店「祇園辻利」とコラボした抹茶オレや「わらびもち抹茶」ドーナツなどを販売している。他にも、2022年にはバレンタイン時期に合わせてベルギーのチョコブランド「ヴィタメール」と共同開発商品を販売。3種類のハート型ドーナツはいずれも本体価格が税別240円と、通常品の価格帯が150円前後であることと比較すると高めである。

 ドーナツ以外のメニューとして「ミスドゴハン」の強化も2017年以降進めてきた。期間限定でさまざまな麺類を発売し、最近では2023年10月に「ピザッタ」を発売。直近では6月にもミスドゴハンシリーズとして、カレーパンのような生地にたまごやメキシカンミートを挟んだ「ザクもっちドッグ」を発売している。

●店舗改装が進み、イートイン客も取り込む

 ミスドは商品施策以外にも、「V/21」と称する居心地を追求した新型店舗として、既存店の改装を進めた。2024年3月期は約100店舗の改装を行っており、都内のリニューアル店を見てみると、内壁は白いレンガを模したデザインで、店内にはゆったり座れるソファ席が置いてある。カフェのような雰囲気があり、サードプレースとしてくつろげる印象だ。店舗改装による効果か、店内では1人でくつろぐ女性客や勉強する学生客が今まで以上に目立つようになった。

 100円セール廃止後の施策をまとめると「高付加価値ドーナツの提供」「食事メニューの充実」「店内改装」の3点だ。中でも食事メニューの充実と店内改装はイートイン強化を目的とした施策であることは注目に値する。テークアウトのファミリー層だけでなくイートインも取り込み、市場の変化とともに客層を拡大できたことが成功につながったといえる。

●著者プロフィール:山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。

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