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「1000円カット」も今は昔 再値上げもありそうなQBハウスから考える「デフレビジネス」の限界

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月17日 6時15分

●値上げで従業員の待遇改善に注力

 消費者の間ではQBハウスの代名詞として「1000円カット」が定着しているが、上述した通り現在のQBハウスの価格は1350円だ。消費増税があった2014年に1000円から1080円へ値上げし、その後も2019年2月には1200円、2023年4月には1350円と段階的に値上げを行った。2019年、2023年の値上げは人手不足に直面し、待遇改善の原資を確保することを目的としていた。

 コロナ禍において、QBハウスの運営元であるキュービーネットホールディングスの業績は外出自粛の影響を受けた。特に2023年6月期以降は人手不足の影響が深刻だった。人員を確保できないことを理由に休業店が生じたほか、店舗の統廃合も進めた。2020年6月期から2024年6月期の間、全社売上収益とQBハウスの国内店舗数は次のように推移している。

売上収益:190億円→189億円→205億円→227億円→247億円

店舗数:568→565→576→557→545

 同社は2023年の値上げを原資にベアを行ったと公表している。ベア率は正社員で平均7.4%、パート社員は時給100円のプラスである。転職サイトの口コミを参照すると、1日のカット人数の多さに対する仕事のキツさや、処遇に対する不満が目立つ。人手不足に悩む手前、人件費を上げなければならなかったのだろう。ちなみに業界では男性客の流入により美容院の数は増えている一方、理髪店の数は年々減っており、理容師の確保が課題となっている。

●値上げ耐性に強く、1000円カットではなくなっても影響は限定的

 値上げによって1000円カットではなくなったが、悪影響はないのだろうか。同社によると、2度の値上げによる影響は限定的であるという。1度目の値上げを実施した2019年6月期の売上高は208億円と、前年から10億円以上伸び、利益も改善している。その後の2020年6月期から2024年6月期における既存店業績の前年比数値は次の通りである。

客数:84.3%→97.6%→107.6%→102.6%→101.4%

売上高:87.9%→97.1%→107.8%→107.0%→110.4%

 2020年~21年6月期はコロナ禍の影響を受けたものの、次年度以降は回復しており、3度目の値上げによる影響が大きいとみられる2024年6月期も前年を上回る客数となった。これらの数値から計算すると、2024年6月期の対コロナ禍前(2019年6月期)客数は92.1%である。対コロナ禍前比で9割という数字は飲食チェーンと同等であり、値上げではなく単に人流の影響が大きいといえる。

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