セイバンの「ひんやり背あてパッド」前年比4倍 開発のきっかけは小学生の“陳情”
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月18日 8時10分
セイバンの「ひんやり背あてパッド」が売れている
ランドセルメーカーのセイバン(兵庫県たつの市)が展開する「ひんやり背あてパッド」が前年に続き、好調だ。気温35度を超える猛暑日が続く中、熱中症対策への関心が高まり、より冷却効果の高い製品への需要が増加している。
同製品は昨年、兵庫県たつの市の小学校に通う全児童に一斉配布されたことで話題を呼んだ。今年は、静岡県焼津市でも配布が実現し、猛暑が続く中で小学生の健康と安全を守る対策として注目を集めている。
●専用の保冷剤で冷却効果を発揮
「ひんやり背あてパッド」は、セイバンが2023年7月に発売した熱中症対策グッズだ。価格は3190円で、セイバン製だけでなく他社製のランドセルにも対応している。吸水速乾素材「COOLMAX fabric」を使用し、凍らせた専用保冷剤を商品のポケットに入れることで冷却効果を発揮する点が特徴だ。
背中の蒸れを防ぐとともに、直接冷却することで熱中症リスクの軽減を図る。セイバンの企画グループ長である香川翔さんは「小学生の安全を第一に考え、冷却効果と使いやすさのバランスを追求した」と語る。
●冷却効果と安全性のバランスがテーマ
開発のきっかけは、兵庫県たつの市の小学生の陳情だった。2022年7月、ある小学生が炎天下での登下校環境の改善を求め、市長宛てに匿名で手紙を投函(とうかん)。その内容は、単なる要望にとどまらなかった。
教科書入りランドセルが約5キロあり、他の荷物を持つ機会も多いことから、帰宅時の疲労を訴えたほか、家族と協力して通学路の距離と所要時間を測定。そのデータを基に、建設作業員向けの冷却ウェアや日よけ効果の高い帽子の全児童への配布を提案した。論理的かつ具体的な提案は、関係者を驚かせたという。
この陳情を受け、たつの市はセイバンに相談。香川さんは「既存の『背当てパッド』(1980円)とは異なるアプローチを模索していた時期と重なり、陳情の声を受けて開発を加速させた」と説明する。「背当てパッド」は、セイバンが販売していた製品で、ランドセルと背中の間に挟み、夏場の蒸れを軽減するためのものだ。しかし、近年の猛暑に対して、同社は単なる蒸れ対策では不十分だと考えていた。
「熱中症リスクが高まる中、より積極的な冷却効果が求められた」と香川さんは語る。そこで、従来の通気性重視から、直接的な冷却効果を持つ製品の開発へとアプローチを変更した。
当初は、首に巻く冷感グッズや、冷感タオルも検討するなど試行錯誤した。結果的に、最も効果的な冷却方法として保冷剤を採用するに至った。
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