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紅麹で揺れる小林製薬からやっと出た「調査報告書」 遅すぎる対応から見る3つの問題

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月29日 6時30分

 本件発生の重要性を鑑みれば、遅くとも3件の症例が発覚した2月1日の段階で、トップを含む全役員に情報共有するべきだったでしょう。そして、仮にトップが決断をしなくとも、監査役あるいは社外取締役という経営から独立した立場から、当局への速やかな報告と製品の販売停止および回収を進言することが、ガバナンスが機能している企業においてはなされてしかるべき手順であったと思います。

 さらに、報告書にある一連の役員関連対応で特に問題視すべきは、常勤監査役の職務怠慢や、社外取締役の役割に関する認識の欠如です。常勤監査役は会計監査だけでなく、業務監査の立場から経営を監視すべき役割を担っています。事実を知った段階で、最低でも社外取締役に速やかに報告するだけでなく、全役員で対応方針を協議せよと進言すべきだったといえます。すなわち、同社では社外取締役に関して役員の誰もがその役割を理解していなかったため、経営を監視すべき社外取締役が蚊帳の外に置かれ、ガバナンス不全の状況にあったといえるのです。

 社外取締役も、十分に機能を果たしていたとは思えません。社外取締役が3月20日に事の詳細を知って以降、外部の眼として事実関係の検証を担う立場にありながら、6月に調査対象の死者が76人に上っていたことの厚労省への報告漏れが明らかになり、同省はこれ以上看過ならぬと調査の直接管理に乗り出しています。同省の立ち入り後には、さらなる報告漏れが続々明らかになるなど、社外取締役の機能不全もまた明らかになっています。こうしてみると、同社のガバナンス体制は、ゼロからの再構築が必要です。

●元会長には引き続き毎月200万円を支給

 3つ目の問題点である、同族経営の弊害についてはどうでしょうか。

 小林製薬は今回の不祥事でトップ交代となるまで、創業以来6代続けて(創業者を入れると7代)創業家の人間がトップを務めてきた完全な同族経営企業です。同族経営が必ずしも「悪」であるとは申し上げません。しかし、創業家トップが続くことで、トップが有言・無言を問わず圧倒的な力を持つことになります。

 結果、周囲にイエスマンが多くなって何事も創業家トップの判断に委ねがちになり、仮にトップが誤った判断をしてもそれに反論することなく追随してしまうようになるのです。世間的な非常識が、社内では堂々とまかり通ってしまうことにつながります。

 2023年、同じように大きな不祥事で世間を震撼(しんかん)させた中古車販売のビッグモーターは、その典型的な悪例であったといえます。強権の同族経営に対して社員は従う以外になく、次々と悪事に手を染めていきました。

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