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紅麹で揺れる小林製薬からやっと出た「調査報告書」 遅すぎる対応から見る3つの問題

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月29日 6時30分

 報告書を見る限りにおいて、小林製薬はビッグモーターのような創業家の強権経営ではなかったとは読み取れます。しかし役員一同が、当局への報告や製品の販売停止および回収に関して、判断しないトップに常識的な進言すらできなかったことは、相互けん制を失った同族経営の弊害であったといえるでしょう。

 同社は不祥事を受けて、小林一雅会長および小林章浩社長の退任を発表しています。一雅会長は取締役こそ外れるものの特別顧問として、章浩社長は引き続き取締役として健康被害の補償対応に当たるといいます。

 一雅氏には引き続き月額200万円の顧問料を支払うという事実には、世間から非常識だとの批判も上がっています。後任の山根聡社長も、ナンバー3として2006年から20年近くも取締役を務めている、いわば創業家の「番頭」であり、今回の役員人事からは同族経営の弊害を顧みて体制を刷新するという意欲は全く見えてきません。

●社外取締役がもっと存在感を示すべき

 考えてみれば、工場内管理の甘さも、ガバナンスの不在も、すべては小林製薬の組織風土ゆえの問題であり、その悪しき組織風土を作り上げてきたものが、創業以来100年以上にわたる相互けん制が働かない同族経営に他ならないのではないでしょうか。

 その結果としてわれわれが目の当たりにしたものは、あってしかるべき説明・謝罪会見が遅れ、トップ交代発表時には会見を行わず、決算発表時に委員会報告書の概要説明を盛り込んでお茶を濁すという、消極的な情報開示に現れた創業家の「逃げ」の姿勢でした。退任した小林一雅会長を特別顧問として、月額200万円の報酬で「厚遇」するという非常識な対応も看過できません。

 不祥事に関して、率先して対策を実行に移す判断や指示を行うことはなかったとされる会長、社長の責任もさることながら、それを修正できなかった、取締役会過半を占める社外取締役4人の責任も大きいとみています。しかし、社外取締役4人は留任が確認されています。報告書の公表に伴う取締役会総括では、2025年3月の定時株主総会で企業統治などの抜本的改革を担う新たな経営体制を諮るとしており、多数の人命が失われた不祥事の重大さに比した対応の遅さにも驚かされます。

 「(創業以来)最大の危機にある」(山根社長)として、紅麹事業からの完全撤退を発表した小林製薬ですが、危機回避のポイントはそこではありません。最大の根源である同族経営からの完全脱却となる役員体制の刷新なくして、小林製薬の信頼回復はあり得ません。機能してこなかった社外取締役が今こそ声をあげ、まずは同族関与の一掃をはじめ早急な体制見直しに動くべきであると強く思う次第です。

(大関暁夫)

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