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クレカは「Suica王国」の牙城を崩せるか? 交通系タッチ決済の現在地

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月7日 10時36分

 なぜこれほどまでに交通系タッチ決済が注目を集めているのだろうか。その理由は、当初のインバウンド対応という目的から、より幅広い価値を見いだされるようになってきた点にある。

●インバウンド対応から国内ニーズへ

 交通系タッチ決済の導入は、当初、増加するインバウンド需要への対応が主な目的だった。海外からの観光客にとって、日本独自の交通系ICカードを新たに購入することなく、普段使い慣れたクレジットカードで乗車できる利便性は大きな魅力だ。

 ところが昨今、公共交通事業者はインバウンド対応以外のメリットに目を向け始めている。大西氏によると、最近では地域の交通課題解決の手段としてタッチ決済を導入する例が増えているという。後払いの特徴とクラウドシステムを活用した柔軟な料金設定が可能な点が、魅力の一つだ。

 すでに福岡市や熊本市で導入されている一日乗り放題に加え、「月の上限サービスも開発した。すでに鹿児島市交通局に導入されており、定期よりも幅広いニーズに対応できる」(大西氏)という。特定のカードやサービス利用者向けの割引、オフピーク時の割引など、従来のICカードシステムでは難しかった多様な料金設定も可能になる。

 さらに、マイナンバーカードとの連携も視野に入れている。「高齢者の割引、若年割、住民割など、さまざまな属性に応じた割引にも対応できる」と大西氏。これにより、地域の実情に合わせたきめ細かな料金設定が可能になる。

 加えて、交通乗車と消費サービスの連携も重要な戦略だ。大西氏は「観光施設の入場やホテル、百貨店、行政サービスと連携し、さまざまなサービスをつなげられる」と説明する。これは、単に移動手段としての公共交通機関から、地域の経済活動や生活サービスの中核へと、その役割を拡大させる可能性を示している。

 データ活用の面でも、新たな展開が予定されている。「データダッシュボードを提供し、どんな人がどこで乗ったか、そうした情報を事業者に分析できる環境を提供していく」と大西氏。これにより、交通事業者は利用者がどこから来て、どんな年代で、何に支出しているかといった行動パターンを詳細に把握し、サービス改善や新規事業の立案に活用できるようになる。

 さらに、三井住友カードは「MaaSプラットフォーム」も開発中だ。大西氏は「各社が個別にサービスを提供できるアプリを開発中で、来春には企画チケットなどの販売サービスから順次機能を拡張していく」と述べる。これは、交通系決済を起点として、さまざまな移動サービスを統合し、よりシームレスな移動体験を提供することを目指すものだ。

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