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「桃鉄 教育版」導入が1万校を突破 「社会」の授業以外でも使われている理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月9日 7時10分

 「クイズ機能など、ゲームソフト版にはない教育的な要素を入れることも考えたが、正頭先生からの提案もあり『桃鉄』の良さはそのままに、先生が授業で使いやすい機能を実装した」

 「桃鉄 教育版」の提供にあたって特に配慮したのは、「GIGAスクール構想」の端末で使えることだ。GIGAスクール構想とは文部科学省主導で2019年に開始された取り組みで、全国の公立学校で学ぶ児童や生徒に対して1人1台の学習用端末と高速ネットワークを整備するというもの。

 当初はアプリ版のみの提供も検討していたが、教育機関向けのPCまたはタブレット端末の設定によってはアプリの導入でつまずいてしまう可能性があることが分かった。そこで現在は、URLとパスワードを入力するだけで利用できるWebブラウザ版をメインで提供している。

 IDを発行している約1万校の内訳は、公立が9割で、私立が1割ほど。「公立が多くなると想定していたが、結果的に日本の学校の公立・私立の割合と大きく変わらなかった」

 順調に導入が進んでいる理由として、同社は「『桃鉄』そのものが30年以上前からあるゲームで、現役の先生の中にも『桃鉄』で地理を覚えた人もいる。GIGAスクール構想でPCやタブレット端末の利用機会が増える中、実際に教育版を活用した先生の間で『授業でも桃鉄が使える』といった声が増えていったのも大きいのでは」と分析している。

●意外な使われ方も

 読者の中にも「地理は『桃鉄』で学んだ」という人は多いだろう。教育版についても、基本的には社会や地理の授業での利用を想定していた。一方で使い方は学校や教師にゆだねていることもあり、例えば「算数の授業で利益率を学ぶため」「国語の授業で難読漢字を学ぶため」「クラス替え後のコミュニケーション活性化を図るため」「総合的な学習の時間で探究的な見方・考え方を学ぶため」といった、想定外の活用もされている。

 そのほか「休日明けの月曜日」にあえて利用している学校もある。ベータ版のテスト時には「教育版の桃鉄をきっかけに、学校に来るようになった元不登校の生徒もいた」という。

 岡村氏は「『桃鉄』だけやっていれば地理ができるわけではないが、授業や学校生活と向き合うきっかけ、地理に興味を持つ入り口として貢献できていればうれしい」と話す。

 同社は2024年4月、東京大学大学院情報学環と「桃鉄 教育版」の教育的価値に関する共同研究を開始した。2024年度内には一定の研究結果を発表する予定で、導入実績を基にした教育的価値の実証が期待される。

 今後は教育現場からのニーズが高い「特定の町を追加できる機能」をアップデートするほか、インターナショナルスクールなどでの活用も期待できる多言語対応、世界を舞台にした『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』の教育版などを検討しているという。

 シリーズ最新作「桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~」(2023年11月に発売)では、日本国内だけでなく世界366都市を物件駅として収録している。教育版の対応にも期待が膨らむが、「地図がこれまでの平面ではなくシリーズ初の立体的な球体マップを採用したので、それをGIGAスクール構想の端末で動かすにはどうすべきか、研究を進めている。また『世界版もほしい』という声が届いているので、将来的に進めていきたい」としている。

 「桃鉄」シリーズは発売から35年以上がたつ。教育版の今後の展開に注目したい。

(熊谷ショウコ)

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