システム導入で起きる“深刻な部門対立”どう解決? あの部署の効率化で、こっちの部署から不満噴出
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月3日 6時0分
機能部門は利害対立を起こしてしまうが、プロセスオーナーは独立した立場でプロジェクトを推進する(提供:ゲッティイメージズ)
前回記事では、多くの日本企業で基幹システムのリプレースが失敗に終わる原因として、俯瞰(ふかん)的に業務プロセスをデザインする「プロセスオーナー」が不在である点を取り上げた。今回は、このプロセスオーナーが担うべき役割とは何なのか、解説したい。
●部門間の利害対立をどう越えるか
最初に述べておきたいのは、基幹システムのリプレースはあくまでも手段であるということだ。プロセスオーナーとDXを組み合わせる最大の目的は、機能部門別に個別最適化された会社の仕組みを、部門横断の全社最適なものに改めることである。
部門個別最適で硬直化された仕組みでは、事業環境の変化に応じてビジネスを迅速・柔軟に対応させることも、頻繁なレギュレーション変更に即座に対応することも困難だ。さらに言えば、労働人口の減少といった長期的なトレンドや大規模災害・地域紛争といったアクシデントから強靭に回復することも見込みづらい。こうした変化や不確実性に強い、レジリエントな(回復力がある)オペレーションモデルを構築することこそが、プロセスオーナーを基軸としたDXを推進する目的である。
実はERPの登場と時期を同じくして、企業に求められるマネジメントスタイルは変化している。
企業を取り巻く環境変化や不確実性がそれほど大きくない時代は、営業、工場、ファイナンスなどの各機能部門がおのおのの役割に対して最善を尽くすことで、その総和が企業全体の業績に直結する、いわば足し算のマネジメントが主流であった。
こうしたマネジメントスタイルのもとでは、各部門が最大限のパフォーマンスを発揮するために、部門固有の業務機能要件を専用システム機能として実装することが求められてきた。
しかしながら、ある機能部門の要求を満たすことが、他部門の不利益につながるというのは、残念ながらよくある話だ。こうした部門間のトレードオフの関係を見定め、プロセス全体を通じて部門横串の最適解を見いだし、合意に基づき各機能部門が連動して動くことの重要性が、昨今の経営環境ではますます重要になっている。
環境変化や不確実性が高まる昨今、絶対的な正解が存在するわけではなく、最適解は常に変動し続けている。最適解を見直し、合意形成し、新たな部門連動を実現する──というサイクルを頻繁に繰り返せるマネジメントスタイルが求められている。
そしてそのようなマネジメントスタイル実現のためには、一気通貫したデータを基に合意形成と部門間のオペレーション連携を支える、統合された情報システムが必要となる。これがERP(Enterprise Resource Planning)と呼ばれるゆえんである。
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