日本語教師はなぜ「スパイ」だと疑われたか ツッコミどころ満載のニュース番組
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月13日 9時20分
ベラルーシで日本人が拘束されていた
9月5日、ベラルーシで7月に邦人が拘束されていたことが判明し、騒動になっている。
この邦人は、ベラルーシの大学で日本語教師などをしていたベラルーシ在住の中西雅敏氏(52)だ。地元の国営テレビは9月5日、中西氏が日本の情報機関のスパイであり、ベラルーシとウクライナの国境近くの軍事施設の撮影をするなど、情報活動をしていたと報じた。
そしてその翌日には、16分ほどの長さのニュース番組が国営放送で放映され、YouTubeでも配信された。その動画には長野県の企業関係者も登場し、なぜかその会社のトップがスパイのハンドラー(スパイを運用する諜報員)として描かれていた。
まだこれから事態が進展する可能性もあるが、これまでの経緯を見ると、日本の企業関係者やビジネスパーソンも、国外でいつスパイ関係組織として扱われる事態に見舞われるか分からないというリスクを再確認できる。そこで今回はこの騒動をさらに深掘りしてみたい。
これまで世界各地のスパイ機関関係者やスパイ絡みの事件、歴史などを取材してきた筆者としては、今回のニュース番組はツッコミどころが満載すぎるずさんな内容という印象だった。根本的な事実誤認も見受けられる。
●なぜスパイだと疑われたのか
まず番組内では、中西氏のPCなどの情報から、日本に帰国した際に「国家公安委員会」に訪問する予定だったと示唆している。国家公安委員会は日本の警察を取り仕切る組織であると紹介されており、彼が情報当局のスパイだったと言わんばかりの見せ方になっている。
さらに日本の情報機関が中西氏に「使い放題」のクレジットカードを渡していたとして、カードの複写まで見せている。筆者は日本や世界の情報機関を取材しているが、クレジットカードを使い放題にして海外で活動できる情報機関は日本にはないと言える。少なくとも、ベラルーシ国内の情報は日本にとってそれほど重要なものではない。
日本の情報機関には、警察当局、法務省の外局組織である公安調査庁、外務省の国際情報統括官組織、政府には内閣情報調査室、防衛省・自衛隊には情報本部などがある。こうした組織は基本的に、日本国内で情報活動を行っているが、なかには海外にいる邦人などに情報提供の協力を依頼している組織もある。ただ、いわゆるスパイ工作のような大々的な組織的情報工作をさせることはほとんどない。そうした活動には法的な根拠もなく、協力者が拘束されるような場合には邦人保護もままならないのが実態だ。
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