労働者のスタンダードは「元気でバリバリ働ける人」……本当にそれでいいの?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月1日 6時0分
ワークシックバランスが徹底されれば、“働き手候補者”が労働市場に参入できます。人知れず病と闘いながら働いている人の潜在能力を引き出すことも可能です。
実際、2022年時点で働く人全体の40.6%が病気やけがで通院しています。2001年の28.2%から12.4ポイントも増加しました(厚労省調べ)。
一方、何らかの疾患を抱えながら働いていることを、会社(所属長・上司)に相談や報告「できない」あるいは「していない」人は、正社員でも4人に1人(25.3%)もいます。非正規雇用の場合、派遣社員では半数近い46.2%、パート・アルバイトは38.1%、契約社員は31.5%と、正社員を大幅に上回ります。
歳を重ねれば細胞は老いるし、体のありとあらゆる機能は衰えます。なのに「病と共に働く」のが難しい現実がある。突然病気を告知され、これまでの通りの生活は送れない状況になった時に誰にも相談できず、1人で悩むしかない社会は、シンプルにおかしいと思います。
そもそも70歳まで働くのが当たり前になり「75歳まで働けそう!」と思える人は確実に増えているのですから、どんな雇用形態であろうとも、どんな立場や年齢であろうとも、「実は私……」と弱音をはける空気をつくる。それこそが、心理的安全性(psychological safety)のある組織です。
心理的安全性=意見を言う職場と思い込んでいる人がいますが、psychological safetyとは「自分のマイナスになるかもしれないことでも言える雰囲気が、チーム内にある状態」を示す言葉です。Psychological safetyを、Trust(信頼) やMindfulness(マインドフルネス)と混同する人もいますが、Trustは他者への感情であり、Mindfulnessは自己の感情であるのに対し、Psychological safetyはあくまでも「場=チームや職場」に抱く感情です。
「実は私、がんになってしまって。治療しなければならない」「実は私、目に見えない難病なので、急に体調が悪くなってしまうことがある」などと言い合える職場を、知恵を絞って実現すれば相当な人手不足は解消されるはずです。
●ケア労働を評価すべき、その理由
そして、ケア労働を評価する社会の実現も欠かせません。ケア労働とは、育児や介護をはじめ、家族が生活を営むために必要な家事を担う重要な労働です。給与をもらい働く市場労働とともに、生きていくためには必要不可欠なものです。
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