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「老人扱いしない」シニア向け事業にZ世代が殺到、なぜ? 運営会社の社長に聞いた

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月27日 9時40分

 デザイナーとして働くスタッフの約8割がZ世代だ。若者から人気を集める要因として、赤木氏は価値観との高い親和性を挙げる。「自分らしさの追求と社会貢献への意識が、Z世代の就労観の特徴であり、この両面を満たす職業として認識されている」

 デイケアなどのケア職が日常生活の基本的なサポート(睡眠・食事・入浴・排泄など)を中心とするのに対し、デザイナーはより自由な発想で関わっている。世代間交流を通じて成長を実感したり、シニアの人生に寄り添いながら創造的な提案ができたり、そうした点が魅力となっているようだ。

 さらに、偏見や差別などに強い問題意識を持っている点もZ世代の特徴といえる。「高齢者」として単に支援の対象とするのではなく、豊かな経験と知識を持つ個人として再評価する姿勢が、世代間の相互理解を深めているという。

 「デザイナーとしてのレベルアップに伴い、コミュニケーション能力が向上する。就職活動やプライベートにも好影響があり、仕事のモチベーションになっている」と赤木氏は語る。デザイナーの経験が、若者たちの成長と自信につながっているようだ。

●シニアの生活をポジティブに変容させる

 デザイナーの介入により、シニアの生活にも顕著な変化が見られる。例えば、同居していた姉を亡くし塞ぎ込んでいた80代の女性は、デザイナーからの働きかけでピアノを再開しセッションを楽しむようになっただけでなく、担当デザイナーの結婚式に自分の足で参列することが新たな目標となり、外出頻度が増加したという。

 この事例は、シニアの行動変容を促し、健康寿命の延長に貢献した好例といえる。

 ある若手スタッフは、自身のことを「カウンセラーではなく、あくまでもデザイナー」と表現する。話を聞くだけでなく、シニアの人生をより豊かにするための具体的な提案と実践をサポートし、行動変容に伴走することが重要であるという考えだ。

 この姿勢は、シニアとの信頼関係だけでなく、周囲の家族からも感謝の言葉を受け取る機会を増やしているという。

 また、ポジティブなシニアを増やしていることは、介護・看護分野にも波及効果をもたらしている。「デザイナーの資格を持つ介護士や看護師たちから、『介護や看護の仕事を志した原点を思い出した』という声を多く聞く」と赤木氏は語る。介護施設向けの研修事業も展開し、離職防止にも一役買っているという。

 事例が示すように、デザイナーの取り組みはシニアが前向きな人生を送るための後押しとなっている。このようにシニアの行動変容を促し、寄り添えるデザイナーを育成・輩出するため、同社は独自の研修制度を作り上げた。

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