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「老人扱いしない」シニア向け事業にZ世代が殺到、なぜ? 運営会社の社長に聞いた

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月27日 9時40分

●企業向けに展開も

 デザイナーになるには、合計150時間の研修を受けなければいけない。現在90種類以上のワークショップやロールプレイが用意されている。

 シニアの自己肯定感を高めるには、ホスピタリティが最も大切という考えから、相手に喜んでもらうための褒め方やネガティブな言葉への対応方法などの実践的なスキルに加え、傾聴、対話力、顧客体験設計、シニア理解、エイジズムやウェルビーイングに関する知識の習得にも焦点を当てている。

 成長段階に合わせたレベル別研修のほか、経験豊富なデザイナーが新人の相談役となるメンター制度も導入。この充実した研修体制が、自己成長を重視するZ世代にとって大きな魅力となっている。

 特筆すべきは、研修プログラムが現場のフィードバックを基に常に進化している点だ。創業期からシニアへの訪問内容はすべて録音し、対話を分析することで、より効果的なアプローチを見出し、研修に反映させている。

 これら研修制度やシニアに関する大量なデータをもとに、企業向け事業の展開も進めている。すでに引き合いも多く、同社の年間売り上げの9割程度がB2B事業だという。

●企業向けの人材育成事業も本格化していく

 シニアに関するデータと理解の深さ、人材育成のノウハウを活用することで、企業のシニア向けサービスや研修制度の開発に貢献している。赤木氏は、シニア向けの新規事業開発ではエイジズムによる固定観念が障害になることが多いと指摘する。

 「『きっとスマホは使えないだろう』といったネガティブな発想ではなく、人生を豊かにする、人生をデザインするという発想で事業を作るべき」

 また、人材育成事業についても企業が導入しやすいようにノウハウをパッケージ化し、9月末より本格展開していくとしている。

 同社は2030年の上場を目指し、さらなる事業拡大への意欲を見せる。その中核が、デザイナーの育成だ。同年までに全国で3万7000人のデザイナー認定を目標に掲げている。現在、1企業当たり100人単位で研修を導入していることから遠くない将来に実現できると見込んでいる。

●課題は地方への展開。対策は?

 しかし、全国展開していくには業界ならではの課題もある。訪問事業でシニアを対象にしている以上、オレオレ詐欺や訪問販売詐欺が社会問題として顕在化する中、特に地方で信頼を得ることは簡単ではないという。

 この課題に対し、同社は地銀や自治体との連携、地元の老舗企業の新規事業として組み込んでもらう形での展開を目指す。既に複数の自治体で構想が始まっており、来年以降から地方展開が本格化する見込みだ。

 将来的には、デザイナーを秘書検定やインテリアコーディネーターのような、一般的な資格職とする構想もある。高齢化が進む日本社会において、ますます重要な存在になると予想されるだけでなく、DXが進む中だからこそ「リアルなつながりはより密になり、目の前の人を喜ばせてポジティブな気持ちにさせる職業の価値は高くなる」と赤木氏は展望を語る。

 AgeWellJapanのサービスは、高齢化社会に新たな価値観をもたらし、シニアのウェルビーイング向上と社会課題の解決を同時に実現する可能性を秘める。日本の未来をどう変えていくのだろうか。

(カワブチカズキ)

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