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集英社、講談社、小学館など、マンガ出版社の多くが非上場なワケ

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月20日 9時10分

●上場企業の戦い方

 非上場企業が大ヒット作品をつくると書きましたが、では上場企業や新興IT企業がヒット作品をつくれないかというと、全くそうしたことはありません。今そうした強いかたちがひとつあるというのみです。

 そして、おそらくイメージされた方が多いと思うのですが、上場している大手出版社と言えば、KADOKAWAがあります。

 KADOKAWAは、2024年3月期~2028年3月期で中期計画書を出しています。その中で「IP創出目標」を24/3期で約6000点であるところを、28/3期で7000点超目指していくということを書いています。

 マンガはもちろん、ラノベなどの書籍、アニメ、ゲームなどさまざまなIPをつくり、売っていく複数の事業をもつKADOKAWAは「IP価値の最大化」ということを常々うたっています。これは同社の特質から分かりやすい考え方で、他の出版社にはとれない大きな戦略です。

 同時に「出版事業によるIP創出」と題したチャートの中で、IP創出目標数を6000から7000へと置いています。これはラノベ・マンガ・絵本など、アニメやゲームに展開できる原資となるIPを、できる限り多くつくることで、KADOKAWA単体でも実現できるメディアミックスによるIP価値の最大化につなげるということだと思います。聞けば、これは創業一族のひとりでもある、角川歴彦前会長が号令した考え方のひとつだとかで、現・夏野剛社長の体制でも徹底されているようです。

 言い換えると、本連載の冒頭で紹介した「裾野広ければ頂高し」を、1グループで実現するという、上場企業ならではのスケールの大きな戦略です。これは、国内最大級のメディアミックス企業、KADOKAWAにしか取れない戦略で、上場企業として規模の拡大を狙いやすい企業体として正しい選択だと思えます。KADOKAWAの近年の決算は、ゲームなども含めて好調を維持していますが、そこにつながっていると言えるのではないでしょうか。

 小学館、集英社、講談社といった非上場の大手3社とKADOKAWAで取っている戦略には大きな違いがあるのですが、これは優劣ではありません。マンガ業界、エンタメ業界がある程度の規模感になってきた現在、それぞれが違う戦略を取ることによって全体として強靭な裾野をつくっています。例えば、そこで働く人や、それぞれの出版社と付き合う漫画家など、自分に合ったところとともに戦えるように選ぶことができる、選択肢に多様性が生まれていると言えます。

(菊池健、一般社団法人MANGA総合研究所所長/マスケット合同会社代表)

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