生成AI「本部では使われているけど……」 みずほFGがぶち当たった、社内普及の壁
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月15日 9時4分
Wiz Searchは現在PoC(概念実証)を実施中だ。サービスや製品に用いられるアイデアや技術が実現可能かを確認しながら、精度改善チューニングを進めている。
3つ目が、「個別特化AI」と呼ぶ「Wiz Create」だ。これはプレゼン資料を読み込んで説明スクリプトや指摘事項、想定Q&Aを生成するアプリで、「想定QA生成AI」とも呼んでいる。
「例えば銀行の法人営業担当が中小企業の社長にところに行くと、決済商品や資金調達、M&Aなどの提案をするわけですが、作った提案書をいきなり社長に見せるのが不安になる営業担当が多いそうです。しかし、その前に上司に見せたくても忙しくてなかなか捕まらないことも少なくないのです。そこで提案書をアップロードするだけで、社長が言ってきそうな質問を指摘してくれるのが、この想定QA生成AIです」
想定QA生成AIも現在PoC(概念実証)を実施中で、「資料への指摘生成」機能などを順次追加しながら開発を進めている。
●本支店で3倍近い利用率格差 どう埋める?
みずほグループでは、開発・導入したこれらのツールの活用をどのように広めているのか。2023年11月から2024年8月にかけて、利用率は全社的に主に右肩上がりで上昇している。だが、本部と営業部店で比較すると本部が進んでおり、その利用率には顕著な差があるという。細かい数字は公表していないが、その差は3倍近い開きがある。
「営業部店での生成AIはまだ始まったばかりの、アーリーアダプターの段階だと捉えています。営業部店に対しては単純接触回数を増やしていくことで利用率を伸ばす方針です。本部の方は利用率が数十パーセントまで届いており、アーリーマジョリティ段階に一定程度到達している認識しています。本部に対しては利益実感、ユースケースを積み上げる施策を今後重視しています」
みずほグループでの生成AIの主なユースケースとして、齋藤調査役は「契約書の一次チェック」「過去のエクセルVBAマクロの修正」「業務記録に基づく自身の振り返り」「フリーコメントの分類」「取引先の事業計画の検証」「監査計画の立案補助」の6つを挙げる。「こうした社内のユースケースを、いかにしてグループで横展開し普及させていくかが課題」だと話す。
今後は生成AIの効果検証も進めていくという。効果検証はWiz Chatの利用ログを分析することで継続的に進めており、徐々に利用の高度化が進行している。内製開発ラボでは、数十万件のログに対する自己分類的分析AIツールの構築も進めている。
みずほグループでは「生成AIの真の効果はまだ途上」だとしている。どうすれば生成AIの真価を引き出せるのか、効果測定の仕組みも導入し、集計・分析・打ち手検討のPDCAサイクルを回していく。
みずほグループに限らず、2023年以降いち早く自社で生成AIツールを導入した企業は珍しくない。ところが、その社内活用の段階となると、導入から1年以上経っても各社で試行錯誤の状態が続いている。現状はその試行錯誤に対し、効果検証を進めている状況だ。
導入から社内活用、そして効果測定。多くの企業が「生成AIの導入がゴールではない」難しさを実感している。
(河嶌太郎、アイティメディア今野大一)
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