本当に「第三者」? 企業不祥事でよく見る「第三者委員会」に潜む問題点
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月31日 6時35分
このようなずさんともいえる第三者委員会の姿勢を強く問題視したのが、コンプライアンスを司る弁護士の業界団体、日本弁護士連合会(日弁連)でした。日弁連は事態を重く見て、第三者委員会の規律を正すべく2010年に「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」をまとめて公表したのでした。
ガイドラインでは、第三者委員会を次のように定義しています。
「企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会である」
具体的活動としては「企業等において、不祥事が発生した場合において、調査を実施し、事実認定をおこない、これを評価して原因を分析する」「調査結果に基づいて、再発防止等の提言をおこなう」「企業等から独立した立場で、企業等のステークホルダーのために、中立・校正で客観的な調査をおこなう」などとあります。
また委員数は原則3人以上とされ「当該事案に関する法令の素養があり、内部統制、コンプライアンス、ガバナンスなどの企業組織論に精通した者でなければならない」としています。
●「法律家だからこそ」の問題にも目を向けるべき
日弁連のガイドラインが指し示す第三者委員会の在り方に、疑問点がないわけではありません。
特に「学識経験者、ジャーナリスト、公認会計士などの有識者が委員として加わることが望ましい場合も多い」と弁護士以外の専門家が加わる必要性に言及しているものの「委員である弁護士はこれらの有識者と協力して、多様な視点で調査をおこなう」と、あくまで弁護士主導であるべきと読み取れる点は、気になるところです。
もちろん、日弁連のガイドラインなのでこの点は致し方ないのかもしれません。しかし、企業で実務経験のない弁護士が主幹を務めることで、不十分な検証、あるいは適格性を欠く改善の提言になるリスクは考慮されていないといえるのではないでしょうか。
法律家主導の第三者委員会による失態例として、2015年に東芝の不正会計調査で立ち上がった第三者委員会が有名です。当時の委員会は東芝経営陣の人選により、元東京高等検察庁の検事長である弁護士を長とした法律家集団に、会計士を加えた「士業チーム」。電機業界に精通した、マネジメントの専門家不在というメンバー構成でした。
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