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紙の領収書が復活 インボイス制度を緩和すべき、これだけの理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月15日 17時14分

●相反する2つの法制度

 今回の混乱の背景には、電子帳簿保存法とインボイス制度という、異なる目的を持つ2つの法制度の相克がある。会計帳簿などの電子保存を認める電子帳簿保存法は、十数年かけて何度も改正を重ねてきた。政府のIT化推進という大方針の下、企業の生産性向上を目指し、段階的に規制緩和を進め、使いやすい制度に姿を変えてきたのだ。

 法人カードの利用データを領収書の代わりとして認める2020年の改正は、その一つの到達点だった。骨太の方針でも掲げられたデジタル化推進の流れに沿った改正だ。

 一方、インボイス制度は税の公平性確保を目指して導入された。取引の正確な消費税額と消費税率の把握を目的に、これまで必須ではなかった領収書をエビデンスとして保管することが求められる。利便性の向上とは全く異なるベクトルで生まれた制度だ。

 結果として、電子帳簿保存法で認められたデジタル化の取り組みの多くが、インボイス制度の要件を満たせない事態となった。「制度設計の段階で、これまでのデジタル化の流れとの整合性が十分に検討されなかった」というのが、日本CFO協会の見方だ。

●POSと決済 分断されたシステム

 なぜインボイス制度では、キャッシュレス決済でも紙の領収書が必要なのか。その理由は、店舗の決済システムの構造にある。

 一般的な店舗では、商品の売上情報を管理するPOSレジと、クレジットカード決済を処理する決済端末が別々のシステムとして存在する。POSレジには商品名や価格、税率、店舗の事業者登録番号など、取引に関する詳細な情報が保存されている。一方、決済端末からカード会社に送られるのは、合計金額と加盟店情報程度だ。

 「カード会社から企業の経費精算システムに送られてくるデータには、インボイスに必要な情報が含まれていない」と舟本氏は説明する。税額や税率、事業者登録番号といったインボイス制度で求められる情報は、決済データには入っていない。そのため、別途領収書を入手しなくてはならなくなる。

 この仕組みを変更するには、POSレジと決済端末を完全連携させ、全ての情報をカード会社経由で送れるようにする必要がある。全国約759万の加盟店の決済端末を更新し、通信回線も増強しなければならない。そもそもクレジットカードの標準とも異なる仕組みを作ることも必要だ。

 結果として、インボイス制度の要件を満たすには、紙の領収書を別途受け取る以外に現実的な選択肢がなくなったわけだ。

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