紙の領収書が復活 インボイス制度を緩和すべき、これだけの理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月15日 17時14分
●公共料金から規制緩和を 特例拡大に期待
こうした課題に対し、日本CFO協会が提案するのは段階的な規制緩和だ。まず第一に、電気・ガス・水道や鉄道会社など、公共性の高い事業者からの領収書については、インボイスの要件を緩和するよう求めている。
「誰が考えても課税事業者であることが明らかな事業者については、領収書なしでの経理処理を認めるべき」だと中田氏は訴える。実際、公共交通機関の利用については、3万円未満の支払いであれば領収書不要とする特例が既に存在する。「この特例を公共性の高い事業者全般に広げることで、企業の事務負担は大きく軽減される」
第二の提案が、事業者登録番号の確認頻度の緩和だ。「取引先が免税事業者に変更していないかどうか、毎月確認する現在の運用は現実的ではない」と中田氏。年1回の確認で十分とし、仮に年度途中で取引先が免税事業者になった場合は、税務調査で指摘された時点で対応するやり方でもいいのではないか。
財務省は、インボイス制度の基本原則である税の公平性確保を重視する立場だ。しかし、制度による事務負担増は企業のコストを押し上げ、法人税収の減少にもつながる。税収面でも、制度の部分的な緩和による影響は小さいとの見方が多い。
「電子帳簿保存法も、十数年かけて何度も改正を重ねてきた。インボイス制度も実態に合わせた見直しが必要だ」。制度開始から1年、CFO協会は実務の現場から改善を促している。12月の与党税制改正大綱には間に合わない見通しだが、デジタル化推進と税の公平性確保の両立に向け、2025年にかけての制度見直しが課題となる。
(金融ジャーナリスト 斎藤健二)
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