「ゆかり」一本足打法からどうやって抜け出した? 三島食品の運命を変えた“事件”とその後
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月14日 10時32分
さらには、「ゆかり」がロングセラーであったことも大きい。ずっと売れ続けているため、どうしても依存してしまう。兎にも角にも、それだけ「ゆかり」のブランド力が強すぎたのだった。
●「ゆかり」以外に注目が集まった“事件”
そんな硬直状態を一変させた“事件”が起きる。2018年5月下旬のこと。突如Twitter(現X)上で三島食品の商品が注目を集めた。発端は以下の投稿である。
「3姉妹だったのね」
「ゆかり」、青じそふりかけ「かおり」、そして、ピリ辛たらこの「あかり」が店頭に並んでいた様子を指して、この投稿者は3姉妹と表現したのである。それが大いにウケた。
実はそれ以前も同社の取り組みがSNSでバズったことはあった。2014年に発売された「ゆかりペンスタイル」。これは三島豊会長(当時は社長)がいつもペン型の容器に「ゆかり」を詰めて持ち歩き、焼酎に入れて飲んでいたところ、夜のクラブで働く女性たちの間でそれが人気となり、商品化したものだった。発売から1年以上経(た)った頃、急にネットで話題になって注文が殺到した。とはいえ、これはあくまでも「ゆかり」というブランドの領域を出ることはなかったわけである。
3姉妹がSNSで盛り上がった時のことを、野口氏は淡々と振り返る。
「(『かおり』も『あかり』も)発売から何年も経っていましたが、それまで社員は商品名であって、誰も人の名前のようだと思っていませんでした」
ただし、そんなクールな社内の雰囲気とは対照的にSNSではどんどんヒートアップしていった。期せずして一躍、「ゆかり」以外の商品が脚光を浴びるようになったのだ。
「すごいマーケティング戦略ですねとよく言われますが、本当にたまたま。外の人がやってくれただけ」
あくまでも野口氏は控えめに話すが、機転を効かせてSNS上の“ビッグウェーブ”に乗ったのは作戦勝ちといってもいいだろう。それ以降に発売した新商品は人名を意識したものにしているのだから。「名前シリーズ」とも銘打った。
具体的には、20年2月にカリカリ梅のふりかけ「うめこ」を発売。同商品の年間販売数量は初年度が目標比657%、翌年度は前年比で105%と大ヒットした。続く21年2月に広島菜の「ひろし」、22年2月には鰹節の「かつお」を発売した。
原材料を元にしたネーミングである点はそれまでの商品と変わっていないが、「ひろし」については当初、別の商品名が有力候補に上がっていた。それは「ひろこ」。ところが、末貞操社長の一声で原材料の広島菜から頭三文字をとって「ひろし」に。結果、それが再び大きなバズりを生み出した。
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